一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

べっぴんの町

私的評価★★★★★★★★★☆

べっぴんの町 [DVD]

 (1989日本)

 元少年院の教官の“私”(柴田恭兵さん)は、神戸の街角で中国人トニー・トー(笑福亭鶴瓶さん)の経営するテーラーの2階に事務所をかまえる便利屋です。ある日“私”は、シーサイドクラブに勤める田村亜紀子(田中美佐子さん)というべっぴんと船上デート中に探偵の仕事の依頼を受け、彼女の店の上客である宝石商の中嶋達夫(峰岸徹さん)を紹介されました。依頼は家出した娘の町子(和久井映見さん)を捜すこと、中嶋からは町子のポートレート1枚と、友人たちと一緒に写ったスナップ1枚、そして彼女の日記を渡されます。町子捜索の依頼を受けてから、“私”の周りをケンカ屋の2人のやくざ者がうろつくようになりました。数日後“私”は、少年院時代の教え子で、今や関西中に名を馳せるエリートやくざとなった左山集司(本木雅弘さん)から情報を得て、彼とともに少女が連れ込まれたと見られる屋敷に潜入しました。ところが、そこで取り押さえたチンピラからは町子の情報は得られず、代わりにスナップに一緒に写っていた令子(つみきみほさん)を見たことがある、という情報を得ます。令子の父は、中嶋と同じシーサイドクラブの上客のひとり、貿易商の富沢(川地民夫さん)でした。パトロンに神戸市内のホテルに囲われていた令子を訪ねた“私”は、町子が、令子に近寄ってきた不審な男に連れ去られたことを知ります。そして、シーサイドクラブに亜紀子を訪ねた“私”は、そこで不審な男ともめる富沢に遭遇、男を追いかけて店の外に出ると、ケンカ屋の2人が男を襲撃せんとしているところに1台の車が乗りつけ、助手席に男を乗せて逃走しました。運転席にいたのは、町子でした。


 柴田恭兵さんのファッションがイイのです。季節は5月くらいですかねぇ? オフホワイトのくしゃくしゃのコートをダボッと着こんで、見事にサマになってるんですね。背の低いボクには決してマネできません。カッコいいです。

 軒上泊さんの小説「ディセンバー13」を読んだのは、今からもう15年以上前になりますかね? 軒上さん自身が元少年院の教官で、主人公の“私”は彼自身ということになるようです。この映画が撮られたころ、原作は「ディセンバー13」ともう1作別の小説だったと、何かのレビューで読んだような気がしてたんですが、最近ネットで調べると、「べっぴんの町」というタイトルそのものの小説があったんですね。

 ストーリーは日本的ハードボイルドって感じかな? 謎に満ちたハードボイルド的サスペンスたっぷりの展開はおもしろかったのですが、例えばハメットのような、ドライなハードボイルドに徹しきれない、どこか日本的なウェット感を残しているということです。特に、ちょっと生暖かいような、くすぐったいようなエンディングに、そういった雰囲気が表れているように思います。柴田恭兵さん的に、マイルドな感じかもしれませんし、元少年院教官という“私”的な優しさかもしれません。そういえば、荒んだ生活をしている令子に対する“私”の微妙な距離感は、元少年院教官的な優しさを感じました。どういう感じかは映画で確認してください。

 登場する役者さんについて少し。憂いを秘めた瞳、大人の色気を感じさせるファッション、田中美佐子さんは、キレイでした。本木雅弘さんのエリートやくざ、ちょっと微妙…迫力不足は否めないかな。つみきみほさん、相変わらず乾いた感じの棒読み口調、それが魅力なのね。若い!和久井映見さん。若さばかり目立って、微妙に映画の中では浮いた雰囲気の顔に見えてしまうのは、今ボクが彼女に対して持っている先入観のせい? 顔は見覚えある林ゆりやさん、確か別の名前で元AV女優だったような気がします。カワイイ子だったなぁ。本木さんに電話を取り次ぐ若衆に寺島進さん、こちらも若い。まだまだ駆け出しの頃?

 異国文化の影響を受けた港町神戸の雰囲気とともに、このドラマの雰囲気はとてもお気に入りです。

●監督:原隆仁 ●原作:軒上泊(小説「べっぴんの町」)