一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

なぞの転校生

私的評価★★★★★★★☆☆☆

なぞの転校生 [DVD]

 (1998日本)

 ニュータウンに住む高校生・香川翠(新山千春)のクラスに岩瀬真祐未(佐藤康恵さん)が転校してきました。真祐未は実は、自由に次元を行き来出来る能力を持つ次元放浪者でした。彼女は同じマンションに住んでいる翠と親しくなりますが、翠もまた次元ジャンプの能力に目覚めてしまい、ふとした弾みでジャンプを繰り返すようになってしまいます。やがて、翠の次元ジャンプのせいで、ニュータウンの町に異変が起こり始めました。


 眉村卓さんの同名ジュブナイル小説は、NHK少年ドラマシリーズ*1で人気を博していましたが、実はその番組の記憶がないんです。放映当時、見てなかったんではないかと。

 翠が学校の図書室で密かに行う押し花が、思春期の不安定な少女っぽい趣味で、おもしろいと思いました。ありそうでありえない、でもなんか生々しいリアリティ感じるようなエピソードです。また、制服を着ているときの翠と真祐未の会話・やり取りは、ときに眩しささえ感じました。SFだけど、青春ドラマだなぁって。

 「どう、うちの学校?」「病院みたい、生徒はみんな患者、先生は医者で、はみ出した精神を矯正するの」「うちの学校はそんなことないよぉ。だって自由教育だモン」「矯正はね、知らないうちにされてるんだよ。そして、いつのまにかみんな、順応しちゃってるんだ。世界に…」次元ジャンプを身に付けてしまった翠が、この会話の意味を知る矯正院のエピソードがとても怖いです。「あなたは空想の中で箱庭を作り、やがて本当にニュータウンに住んで学校に行っていると思い込んでいるだけなんだ」と、西田健さん扮する医師に告げられ、泣き崩れる翠。「本当って何?」って、見ている自分も思ってしまいました。

 ひとりの妄想が実体化して、世界が滅んでしまう---これは現実世界への警告でもあります。でも、その妄想を抑止することができないかもしれない、という危機感に苛まれる現代はキツいですね。祈るだけではいけないのでしょうが…。

 妻夫木聡くんが、翠の幼なじみ役で出ています。まだ役者として青い、ハッキリいえば、イモ。今でもそんなにうまいとは思えないんですけど…^^;)

 時代的にCGがイマイチ浮いて見えますが、仕方ないですね。でも、そんなことが気にならないくらい、おもしろいです。あ、翠の最後の独白は余計だったかな? 作品の持つ余韻を微妙に濁してしまったような印象を受けました。

●監督:小中和哉 ●脚本:村井さだゆき ●原作:眉村卓(小説「なぞの転校生」)

*1:DVD化されています。

NHK少年ドラマシリーズ なぞの転校生 I [DVD]

NHK少年ドラマシリーズ なぞの転校生 I [DVD]

  • 発売日: 2001/04/27
  • メディア: DVD