一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ありふれた愛に関する調査

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

ありふれた愛に関する調査 [DVD]

 (1992日本)

 「探偵です。たいていのことはやりますが、結婚の身元調査と、行方不明の猫探しはやりません」

 美人のお天気姉さん、有梨子(池田昌子さん)の出る世界の天気予報を見ながらマスをかくぐらいしか楽しみのない、くたびれた中年男の探偵(奥田瑛二さん)が、エリートサラリーマンの夫の浮気調査や一夜をともにした行きずりの男の行方を捜す「ありふれた市民が依頼した、ありふれた愛に関する調査」に関わりながら、依頼人の女にハマって成行きで寝てしまうという、なんとなく締まりのないところのある和製ハードボイルドです。

 いきなり奥田瑛二さんがお天気姉さんの画面を見ながらマスをかいているんで、なんか汚らわしいモン見てしまったようで、ちょっと滅入ってしまいます。まぁ、マスかいたあとには、奥田さんの全裸のシャワーシーンが出てきて、前を向いたら一般映画なのにボカシが入る(しかも男の股間に!)し、次々と依頼人との濡れ場が画面いっぱいに出てしまうし、さながらピンク映画の雰囲気ですよねぇ。また、全編に流れるアコーディオンのメロディが物悲しいシャンソンを思わせて、本当に憂鬱です。

 おまけに探偵は“ダメ人間の見本市”のようで、だらしなく次々と女におぼれては、ポイッと捨てられてしまいます。口説いた女には「この街を離れて、どこかの島にでも行こう」と必ず持ちかけますが、そのあと必ず逃げられてしまうのです。どこか卑屈で主体性を放棄してしまっている感じが、どうしようもなく痛いです。

 まぁ、和製ハードボイルドは、どうもねっとりと湿気ているみたいです。カリフォルニアと日本の気候の違いでしょうか? とはいえ、ほかの作品(特に巨匠・大藪春彦氏とか北方謙三氏の原作モノなど)は見たことないんですがね。

●監督:榎戸耕史 ●原作:関川夏央(小説「名探偵に名前はいらない」)