一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

転々

私的評価★★★★★★★★★★

転々 プレミアム・エディション [DVD]

 (2007日本)

 大学8年生の竹村文哉(オダギリジョーさん)は、自堕落な毎日を過ごすうち、いつの間にか80万円以上の借金をこしらえていた。二進も三進も行かなくなって返済期限が迫ってきたある日、アパートに福原(三浦友和さん)が現れ、借金の返済を迫ってきた。免許証と学生証を持ち去られた文哉は、返済の当てもなく、パチンコで有り金をすってしまい、途方に暮れてしまう。そこへ再び現れた福原が、文哉に奇妙な提案を持ちかけた。吉祥寺から霞ヶ関まで福原の散歩に付き合ったら、100万円をくれるというのだ。ただし、期限はなし。到着は3日後かもしれないし、1ヵ月後かも知れないという。不審に思いながらも、文哉は福原の提案を受け入れるしかなかった。翌日、待ち合わせた井の頭公園の橋の上から、ふたりの奇妙な東京散歩が始まった…。


 幼い頃に親に捨てられ、家族を知らない文哉と、ワケあり福原のユルい散歩ロードムービー

 福原がかつて知人の結婚披露宴で代理親族を演じたとき、彼の妻役を演じた麻紀子(小泉今日子さん)と3人で擬似家族を演じることになる後半の件がこの物語の眼目でしょう。さりげない会話や仕種に、ときおりホロリときます。

 ユルユルなのに、なんか切ない。押し付けがましくないところが、なんだかイイ。

 三木聡監督作品にしては、ギャグを抑えているところが、なんだか奇妙な印象です。三木作品に御馴染みの岩松了さん、ふせえりさん、そして松重豊さんの3人が脇で出てくるのですが、最後の最後まで主人公とは絡まない出演で、この辺もアッサリめなのが、特に「図鑑に載ってない虫」を見終わったあとには、ちょっと物足りない気もします。

 たぶん、藤田宜永さんの原作は、もっと哀愁たっぷりのお話なんじゃないでしょうかね? そういう意味では、軽めにギャグを仕込みつつ、重くならないように仕上げようとしたのでしょう。それでも、何度か挿入される福原の妻が横たわるシーンには、ちょっと耐え難い重さを感じずにはいられませんでした。そういうお話なのです。何か、表に出てくるストーリーより、裏にこっそり流れている福原と福原の妻の物語の方が気になって仕方ないのは、ボクだけでしょうか?

 ラストは…「えっ! それで暗転!?」て感じにアッサリめ。必要以上に感情を高ぶらせるような演出は、三木監督的には、面映かったのでしょうね。らしい気がします。このあと、福原、文哉は、それぞれどうなったのか。それがこの映画の余韻でしょうか。

 それにしても、東京のイイ景色、撮ってますね。

●監督・脚本:三木聡 ●原作:藤田宜永 (小説「転々」