一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

アイ マイ ミー マイン

私的評価★★★☆☆☆☆☆☆☆

アイ マイ ミー マイン [DVD]

 (2006日本)

 大学受験を控えた小林文(ふみ:悠城早矢さん)は、毎日イライラしていた。理由は分からない。明日が東京の大学の受験日という日、文は学校帰りに、兄の徹也(三浦誠己さん)が、家の旅館のワゴン車で派遣コンパニオンの志穂(菜葉菜さん)と駆け落ちするところに出くわす。『どうせ、すぐ帰ってくるんでしょ』と、うんざりする文。駆け落ちすると言うふたりの軽薄な感じの言動に、ますますイライラが募る。文にとっては、旅館を営む両親も、東京でアングラ女優になった姉も、みんな何故かイラつくオトナたちばかりだった。どうして・・・。

 『山形国際ムービーフェスティバル』は、東北の映画文化拠点である山形から、新しい時代のクリエーターの発掘・育成を目的に2005年に初めて開催されたそうです。その第1回の審査員特別奨励賞を獲得した渡辺賢一監督の感動ドラマ、だとか。だから、どうした?みたいな感じ。

 DVDのパッケージの裏面に、『少女から大人への移り変わりを描いた、感動のヒューマンドラマ』と記載してあります。見終わった今、よく意味が分かりません。感動?−でき、、、ませんでした。

 とりあえず、文の、なんとなくイライラしてしまう心情は、ものすごく感情移入できるキャラでした。そのイライラは、未成熟であるが故の、『オトナになりたい。大人になれない』苛立ち。自分の純粋さ、未成熟さと周りに見えるオトナたちの振る舞いに感じる違和感・ギャップ。ボク自身も、あんな感じの思春期〜青春期を過ごし、まんま青臭いオトナになってしまった感じなもので^^;分かる気がするんです。

 そして、そんな文を取り巻くオトナたち。出てくる人物が、ことごとくイラつかせてくれます。

 軽薄な言動を繰り出す兄の徹也(三浦誠己さん)。貧乏でダメダメな感じなのに、自分は頑張っていると言い張る姉の綾子(中村優子さん)。小さなアングラ舞台で息巻いている、生理的に受け付けがたい中年俳優の男。チャラいナンパな男子学生。泊り客のエラそうなパワハラ上司。
 もう、見ているだけで文と一緒にムカつきが募り、動悸が高鳴ってイヤ〜な汗が滲んでくるみたいになって、、、ナンパな学生と文が語るシーンで、『韓国映画オールド・ボーイ”のどこが一番良かったか』という学生の質問に、文が『主人公の男が金づちで10人くらい、ぶっ倒すところ』と答えますが、ホントに何人かぶっ倒したくなりました。

 ところが、文は文で、純粋なためか、周りのオトナに言われたことを、しなきゃいいのに、ことごとくやってしまう無防備さを見せてくれるので、やっぱり見ていてイラッとくるのです。

 ある意味、ニュートラルな人物は、あまり出てきません。まぁ、文の両親は、まだ常識を感じるところはありますが、浮世の由無しごとに翻弄されながらもしぶとく生きるさまは、文の純粋さとの対比によって、少女とオトナの間に横たわる大きなギャップを感じないではいられないところです。そういう意味では、この作品で文は、まだオトナになっていこうとする入り口に立っただけだと思いました。そこで目にしたオトナたちの生態に、戸惑いと受け入れられない自分の未成熟さにうすうす気づき、イライラを募らせているだけ、みたいな。


 しかし、なんですよ。

 えっ!? そのひと言で終わるんですか?

 そう。最後の最後に。深すぎて、意味不明です。

 何を意図したセリフなんでしょうか?


●監督:渡辺賢一 ●脚本:水藤友基/渡辺賢一