一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

バタアシ金魚

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

バタアシ金魚 [DVD]

 (1990日本)

 花井カオル(筒井道隆さん)は学校のプール脇でバイクを押していたところ、頭からいきなり水をぶちまけられました。怒り狂ってプールのネットフェンスに跳びついてみると、そこには恐縮した水泳部のソノコ(高岡早紀さん)の姿が…。彼女に一目惚れしたカオルは水恐怖症のカナヅチにもかかわらず、すぐさま水泳部に入部、彼女の気を惹くため、毎朝バイクで家まで迎えに行ったり、彼女のためにオリンピックに出ると宣言したり…。カオルの一方的で独善的な求愛に閉口したソノコは、ついにはノイローゼから過食症になってしまいます。


 15年前の映画なんですね。当時はレンタルビデオで一度見てます。原作のコミックもときどき読んでました。映画の冒頭、放課後の教室で窓に腕を凭せ掛けて、幸せそうな寝顔を見せている筒井くんの表情が、原作の絵のタッチをなぞっているように見えて、思わずフフンと笑ってしまいました。原作はもっとハチャメチャに、唯我独尊的に壊れているカオルですが、本作でもかなりムカつくキャラに仕上がっていて、筒井くんがうまくやってるな、という感じです。しかし、カオルのわがまま放題のやり方は、今のご時世だとけっこうヤバいキャラですよねぇ。一歩間違えれば、拉致監禁してしまいそうな性格を内包している感じですが、異常なまでに根拠のない自信に溢れていて、立ち直りが早いところが救いでしょう。周りにいたら、ホント迷惑なキャラですが…。

 ストーリーは、自己中心的で破滅的で未熟で純粋なキャラのカオルが、ソノコを始め周囲の人間を振り回しながら、尋常でないほど水泳の特訓にのめり込み、「まさか本気でオリンピックを目指しているのか」と誤解してしまいそうになるけれど、結局は水泳がやりたかったワケじゃなく、ソノコが好きで好きでたまらないだけだったんだ、という「スポ根の皮を被ったラブコメ」です。まぁ、カオルが水泳にいくらのめり込んだところで、すべての原点がソノコの気を惹くことから始まっているので、練習に集中しているかに見えて、次の瞬間にはソノコのことで頭はいっぱいというところが、見ていてイタイんですよねぇ。それでも、結局ソノコはカオルに惹かれて、一度は壊れるまで自分を傷めつけてしまう…何であんな男に惹かれてんねん!て、ほんまムカつくわぁ。

 15年前にはまったく気にも留めてなかったんですが、トンでもない高校生たちです。水泳部の合宿で、いきなりカオルが箱買いの缶ビール2ケースを置き、先輩と飲み散らかしたかと思えば、ソノコも親友のリリコ(大寶智子さん)と「熱いサウナに入って、冷たいビール…くぅう〜沁み込む沁み込む」って本気で話してるし、最後は水泳部のエース永井(東幹久さん)が喫茶店でタバコ喫ってしまって…おまえら大学生かよ、ってツッコミ入れたくなりました。水泳部のエースが肺活量落す喫煙してちゃ、シャレにならんと思うが、どう?

 ついでにもうひとつ、クライマックスでカオルが浅いプールでしつこくソノコを突き飛ばすシーン、今見ると、ちょっと胸が悪くなりますね。激しく突き飛ばし合うことで、次のシーンをグッと盛り上げる算段なんだろうけど、女性に対する暴力シーンに見えて仕方がないのは、時代のせいかもしれません。たぶん、15年前には気にしてなかったはずです。

 本作をDVDで購入した理由は、高岡早紀さんの若くて瑞々しい姿をもう一度拝みたいという下心からでした。背泳ぎで泳いでいるときの姿勢など、キレイな線だなぁと感心します。この作品以降、ちょっとふくよかになって、イマイチ魅力を感じていなかったのですが、最近見た恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会の先生役などでは、また本作当時のような凛々しさを取り戻したような印象で、ちょっとトキメキました。

 牛川工業高校水泳部のウシこと牛若丸は、浅野忠信さんです。まだ声変わりしてないんじゃないの?って感じの甲高い声で、体の線もまだ未熟な感じでした。88年の「3年B組金八先生」第3シリーズに出ていたそうです。見てませんでした。

 テレビドラマで、社会人になったカオルたちのその後を描いた、本作の続編「お茶の間」というのを見たことがあります。後半の6回くらい見てたんですが、配役はすっかり変わってました。カオルが男闘呼組岡本健一さん、ソノコが渡辺満里奈さん、プーが坂井真紀さん、ソノコに接近する男(名前忘れました)に豊川悦司さん。豊川悦司さんは、このころブレイクしかかり中、坂井真紀さんは今で言うなら丸っきりストーカーと化したプーを憎々しげに怪演して、本作で一気にブレイクしたと記憶しています。連ドラはめったに見ないのに、当時けっこうハマッてしまい、最終回にカオルがどうなるのか、というのが凄く話題になったような気がするんですが、あまりの急展開に頭が付いていけず、「そんな終わり方あるかいやぁ!」とボヤいた記憶があります。

 作品のできはイイと思うんですが、カオルのキャラがやはりムカつくので、星5つで勘弁。

●監督・脚本:松岡錠司 ●原作:望月峯太郎(コミック「バタアシ金魚」)