おかえり、はやぶさ

私的評価★★★★★★★☆☆☆

　（2012日本）

　太陽より遠い宇宙の彼方にある、小惑星イトカワのサンプルを採取して、地球に帰還する。
　人類初のプロジェクトへの期待と、人々の想いをのせて、2003年5月9日、小惑星探査機〈はやぶさ〉が打ち上げられた。 〈はやぶさ〉のエンジニア助手・大橋健人（藤原竜也さん）は、失敗に終わった火星探査機〈のぞみ〉のプロジェクト責任者の父・伊佐夫（三浦友和さん）への反発もあり、〈はやぶさ〉の成功への想いが人一倍強い熱血漢。つい周りとも衝突しがちの健人だが、伊佐夫に憧れて宇宙研究を志した新米理学博士・野村奈緒子（杏さん）や、プロジェクトメンバーたちと共に、エンジンからの燃料漏れ、地球との通信途絶、4基のメインエンジンの全停止など様々な〈はやぶさ〉の困難を乗り越える中で、チームの一員として成長していく。
　そして、いつしか〈はやぶさ〉は、その帰還に懸けた関係者だけでなく、日本中に勇気を与えていくのだった・・・

　2003年5月9日、「地球から3億キロメートル離れた小惑星〝イトカワ〟のカケラを拾って地球に持ち帰る」というミッションを帯びて、内之浦 から打ち上げられた小惑星探査機〝はやぶさ〟が、さまざまな困難を乗り越えて2010年6月13日、満身創痍になりながら、ついに地球へ辿り着くという実話をベースに同時期に同じテーマの映画が3本製作されました。
　今さら感はありますが、その〝はやぶさ映画〟を連続でレビューしようと思います。
　まずは、2012年3月10日に公開された松竹版〝鉄板のファミリー映画〟ともいえる〝おかえり、はやぶさ〟です。

　JAXA（宇宙航空研究開発機構）の健人の同僚・岩松大吾（田中直樹さん、ココリコ）の子ども・風也（前田旺志郎さん）に〝はやぶさミッション〟の解説をさせるなど、宇宙科学や日本の宇宙探査史などを小学生にも分かりやすいくらいに具体的にCG映像（明るい！キラキラ！美しい！^^）を交えながら解説してくれるので、ファミリーでも安心して鑑賞できるレベルの作品だと思います。
　ただ、それゆえに、多少大人が楽しむ映画としては、掘り下げが物足りない、ちょっと淡白だ、やけに扱いが軽々しい、などと感じるところもそこそこあります。最後の難局でイオンエンジンのスラスタと中和器のクロス運用を実施するくだりなどは、異様にアゲアゲの軽～いノリで決定されるので、かなりライトな作品に仕上げられてるなと感じました。
　とはいえ、〝はやぶさミッション〟がいかに困難なプロジェクトだったか、という点が非常に分かりやすく、次々と起こる難しい局面をプロジェクトメンバーの英知でギリギリのところで解決していくさまは、爽快です。
　また、大杉漣さんや三浦友和さんらベテラン俳優のみなさんをはじめ、出演者それぞれの真摯な役柄がとても好ましく、作品全体が清々しい印象なのが良かったです。

●監督：本木克英　●脚本：金子ありさ　●音楽：冨田勲　●配給：松竹　●協力：JAXA宇宙航空研究開発機構