一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還バージョン

私的評価★★★★★★★★★★

HAYABUSA -BACK TO THE EARTH- 帰還バージョン [Blu-ray]

 (2009/2010日本)

 2003年5月、小惑星探査機「はやぶさ」は、「小惑星イトカワ」に旅立ちました。はやぶさの使命は、イトカワの岩石を持ち帰ること。イトカワの岩石には、太陽系創成当時の記録が残っていると考えられています。はやぶさは20億kmを旅し、2005年9月、イトカワに到着。しかしそこには、数々の困難が待っていました。2度のタッチダウンを経て、地球帰還を目指すはやぶさ。困難に立ち向かうはやぶさの姿に、私達の心は、なぜこうも惹かれるのか。はやぶさは私達の想いを、宇宙へと連れて行ってくれたのです。


 小惑星探査機〝はやぶさ〟の実話をベースに、プラネタリウムなどのフルドームスクリーンで上映する〝全天周映画〟が製作されました。

 一般公開は、2009年4月1日から、大阪市立科学館と日立シビックセンターのプラネタリウムで上映された〝HAYABUSA BACK TO THE EARTH〟が最初ですが、このとき〝はやぶさ〟はまだ帰還前でした。
 その後、2010年6月13日のはやぶさ地球帰還を、上坂監督自らオーストラリアのウーメラ砂漠に直接出向いて取材し、そのときの模様を元にクライマックスの映像を差し替えた〝帰還バージョン〟が2010年12月18日にリリースされ、差し替え前のバージョンに引き続き、全国のプラネタリウムで上映されました。ボクがプラネタリウムで見たのは、この〝帰還バージョン〟でした。
 さらに、2011年5月から角川映画配給で全国の映画館で上映された〝平面版〟が、本作となるようです。

 ブルーレイには、45分のロング版と28分のショート版が併録されています。プラネタリウムで上映する場合には、〝全天周映画〟のみ上映する場合と〝星空解説〟と組み合わせて上映する場合の2パターンがあり、その両方に対応したバージョンを用意していたということですね。

 映画のジャンルとしては〝科学ドキュメンタリー〟になると思いますが、はやぶさに関わった〝人物たち〟については一切触れられません。純粋に〝はやぶさ〟のミッションと探査機MUSES-Cの機能などが詳しく解説されており、宇宙・天文に興味のある人や宇宙機に興味のある人たちにとっては、とても楽しい内容になっているのではないかと思います。また、JAXA宇宙航空研究開発機構が〝協力〟ではなく〝企画/制作〟にクレジットされていることからも、創作ではなくドキュメンタリーとして撮られた映画であることが伺えます。
 人物は出てきませんが、全編に上坂監督の〝はやぶさ〟に対する強いリスペクトと、例えるなら親が子に注ぐ愛情とも言えるような熱い想いが溢れているように感じます。

 映像は全編CGです。とても鮮やかで美しい! CG映像だけ見ていても、惚れ惚れするような完成度です。

 ナレーターは篠田三郎さん。声が柔らかく、とても心地よいため、ついつい〝ぷら寝たりうむ〟の睡魔に襲われそうになります。いや、失礼^^;

 併録の〝オーストラリア帰還ドキュメント「最後の光」〟では、上坂監督自身がナレーションをしていますが、こちらも心地よい低音で、ステキな語りが聴けます。何より、はやぶさの燃え尽きる光跡を見上げながら、感激の雄叫びをあげる上坂監督の生音声が収録されているのが、臨場感たっぷりでイイですよ。


●監督・シナリオ・絵コンテ:上坂浩光 ●シナリオ:高畠規子 ●音楽:酒井義久(作曲) ●配給:角川映画