超・少年探偵団NEO -Beginning-
私的評価★★★★★★☆☆☆☆
(2019日本)
怪人二十面相が姿を消して10年―。ついに、宿命の扉が開かれた!
初代小林少年のひ孫・小林芳狼(高杉真宙さん)は、親友のワタリ(佐野岳さん)、そして幼馴染にして明智小五郎のひ孫である明智小夜(堀田真由さん)とともに、ごく平凡な高校生活を送っていた。
そんなある日、芳狼の前に10年ぶりに怪人二十面相が姿を現す。
二十面相は「約束の時は近い」とだけ言い残し去って行く。果たして二十面相の言う「約束」の真意とは…?
同じ頃、学園には次々と怪事件が起こり、ミステリー同好会メンバーであるクロサキ(長村航希さん)、夢野正太郎(板垣瑞生さん)、塚原舜(前田旺志郎さん)は事件の謎解きにのめり込んでいく。
芳狼は、10年前のある出来事をきっかけに封印していた怪人二十面相との記憶を徐々に思い出し、自らの秘められた能力や宿命と向き合い始めるが、怪人二十面相に引き寄せられていく芳狼を心配するワタリや小夜との関係には不穏な空気が漂い始める…。 果たして、芳狼たちを待ち受ける運命とは!?
全ての謎が絡み合い、答えが見つかるとき、今こそあの『少年探偵団』が復活する!
その名も『超・少年探偵団NEO』!!
(映画『超・少年探偵団NEO -Beginning-』公式サイト「STORY」より引用)
sbd-neo.com
微妙だなあ……ボクが期待してるところと、ちょっと違うんだよなぁ……。
ボクが見たかったのは、あたかも3世代前からずっと存在し続けているかのように描かれるオカルト的存在の〝怪人二十面相〟との対決じゃなく、明智家、小林家と同じように代替わりしても怪人二十面相として生き続ける天才的犯罪者一族との対決という構図だったのよ。
でも、安直に、あたかも〝人智を超越したような存在〟として、二十面相は描かれていた──少なくとも、ボクの目には、そう映った。
明智探偵や小林少年たちと同時代に生きる〝怪人二十面相〟だからこそ、彼がどんなに不可思議なマジックを見せつけてきたとしても、「もしかしたらそんな凄い怪盗、実在するかも」と肯定的に受け止められるワケで、時代を超越してしまったら、もはやオカルトかファンタジーでしかなくなってしまうと思うんだよね。
芳狼の夢の中にたびたび二十面相が出てきて、芳狼と会話する演出も非現実的だし、なんか、そこら辺の描かれ方が、作品の根幹を成す肝でもあったにもかかわらず、ちょいちょいボクの中で消化不良を起こしかけてて、どうにも期待を裏切られた印象だったんだよなぁ。
とは言え、見どころが無いというほど酷い作品でもなくて、特に高校生たちの周りで起こるいくつかの事件とその探偵のくだりなどは、とても良かったと思うし、高校生探偵を演じている高杉真宙さん、長村航希さん、板垣瑞生さん、前田旺志郎さんらのキャラも立っていて、雰囲気は上々だったと思ったのよ。
そんな感じだったので、トータル的には、どうにも惜しい作品、そんな印象になっちゃったなぁ。
●監督:芦塚慎太郎 ●脚本:赤尾でこ、芦塚慎太郎 ●原案:江戸川乱歩(小説『少年探偵団』シリーズ) ●音楽:丸山漠(a crowd of rebellion) ●主題歌:a crowd of rebellion『Calling』(Warner Music Japan Inc.)
コドモ警察
私的評価★★★☆☆☆☆☆☆☆
(2013日本)
俺たちから逃げられると思うなよ!
横浜を拠点に様々な犯罪を仲介する組織レッドヴィーナス。神奈川県警大黒署の特殊捜査課のエリート刑事たちは、レッドヴィーナスの罠にかかって特殊ガスを吸わされ、あろうことか全員子供になってしまったのだった。
デカ長(鈴木福さん)をはじめとする刑事たちは本庁の命令で、レッドヴィーナスを逮捕するためにコドモの姿のまま捜査を続けていた。そんな折り、来日するカゾキスタン大統領の暗殺予告がレッドヴィーナスから届く。しかし、本庁は特殊捜査課の出番はないという。その頃エナメル(相澤侑我さん)は、大人だった頃の恋人・絵里子(北乃きいさん)に再会し、あの頃のトキメキに心を躍らせつつもコドモの自分に葛藤を抱えていた……。
果たして特殊捜査課の刑事たちは、レッドヴィーナスの大統領暗殺を阻止し、彼らを逮捕できるのか?そして、コドモ刑事たちは大人に戻ることが出来るのか!?
数々の刑事ものにオマージュを捧げる!?
新たな映画がこの春、誕生する!
犯人を捜しつつ、カブト虫も捜してる。
こんな映画は事件だぜ!
(映画『コドモ警察』公式サイト「イントロダクション&ストーリー」より引用)
kodomokeisatsu.com
福田雄一監督作品です。
一応、コメディ…なのかな?
MBS(毎日放送)でテレビシリーズが先行してあったようですが、全く知りませんでした。
悪の組織〝レッドヴィーナス〟の罠にかかってデカ長以下7名全員が子どもにされてしまった特殊捜査課の面々が、子どもの姿のまま引き続き犯罪捜査を続けているという、コナン君も真っ青な振り切った設定です。
雰囲気はあぶない刑事だったり、西部警察だったり、往年のアクション系刑事ドラマのパロディ(なのかオマージュなのかは知らんが)臭ぷんぷんなのに、主要キャストが全員舌っ足らずの子どものせいで、なんとも微妙な雰囲気です。
うん、正直、「何を笑ったらイイんだろうかなぁ?」と思いつつ、メインのドラマ部分を子どもたちが極めて真面目に演じているのが、なんか切ないほど痛く感じてしまいます。
個人的には、思春期前までの子どもたちが、大人の真似事をすること自体は、子どもの成長過程の一コマとして、微笑ましい出来事だと思うんです。必死に自分が大人と同等であることをアピールしているようで、可愛いとすら思えるんですけど。
でも、こうしてドラマの中で大人の真似を一所懸命演じさせられてる子どもたちは、まぁ、決して大人に無理やりやらされてるワケでもないんでしょうけど、やはりどこか大人の事情でやむなく〝やらされてる感〟が否めず、手放しで笑うに笑えないボクがいてます。
そんなん気にせんと、フツーに笑ったらエエのかも知れんけど、〝笑いのツボ〟自体は、食べ物の好き嫌いと同じくらい、個人の趣味嗜好が際立つポイントだと思うので、やはり、自分としては、譲りがたいところなんですよね。
ま、退屈な小理屈はさておき、正直、笑いも涙も無く、なんとも半端な印象の映画でした。ごめんなさい。
●監督・脚本:福田雄一 ●音楽:瀬川英史 ●主題歌:Sexy Zone『High!! High!! People -movie remix-』(ポニーキャニオン)
仮面病棟
私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆
(2020日本)
その日、病院は仮面の凶悪犯に占拠された。
その日、平穏だった「田所病院」はピエロの仮面をつけた凶悪犯に占拠された。
そこには、一夜限りの当直医の速水(坂口健太郎さん)と、凶悪犯に撃たれた女子大生の瞳(永野芽郁さん)。
危険な密室と化した病院から脱出を試みる2人は、次々と不可解な謎に遭遇する─。
入院記録のない患者たち。隠された病室、あるはずのない最新の手術室。
警察への通報を拒否する院長とスタッフ。意図の見えない凶悪犯の犯行目的…。
ここでは病院も人間も
ウソの仮面をかぶっている─。
(映画『仮面病棟』公式サイト「STORY」より引用)
wwws.warnerbros.co.jp
脱出ゲーム的なサスペンス・ミステリー。
閉ざされた元精神病院が舞台、ということで、全編に一定のサスペンス感・緊張感はあったが……。
ピエロの仮面を被ったコンビニ強盗に占拠される、療養型病院。元精神病院だから、いろんなところに人の往来を遮断する格子戸が設けられていて、脱出の自由を奪われる、ということらしい。
しかし、犯人の目的が判然としないまま、思いのほか院内を自由に往来できるカンジが妙に御都合主義を感じるし、犯人がただのコンビニ強盗じゃないことにも、早々に気づけるというモノ。
あとは、秘密を抱えているのが明白な院長(高嶋政伸さん)の言動や病院スタッフの不可解な行動を見れば、何となくストーリーは見えてくるワケだが……。
ピエロの正体とか、予想を裏切るところもあり、クライマックスで一時はどうなるかと思う展開も……あるにはあったんだけど、結局、「なんでそうなった?」的な御都合主義で流されるところに、なんだか〝人の感情の一部分だけ〟に振り回された挙句、机上で組み立てただけの、微妙に現実感を欠いたミステリーになってしまった印象だ。
最後、速水の手に届けられたモノを見ても、救われた感は皆無。
映像では見せてないけど、最後は思いとどまったことを匂わせてる。
でも、ボクにはその気持ちが分からんかったなぁ。
やりきらなかった復讐で、精神的に立ち直れるん?
そこらが、〝人の感情の一部分だけ〟に振り回された挙句、御都合主義に流された印象たる所以。
ボクなら半端にするくらいなら、ハナからしない。
中断するなら、「無念!」と自決する。
そうでもないなら、司直の手に落ち、心を閉ざしたまま、罪を償うことになるかな。
速水の手にアレが届けられたという事実は、そのどれでもないことを暗示している。
犯人がこの後どうしたか、は、観る者それぞれの倫理観に基づく憶測に委ねられた、と見るべきなんだろうね。
なんだか、モヤッと感ばかりが残って、気持ち悪かった。
●監督:木村ひさし ●脚本:知念実希人、木村ひさし ●脚本協力:小山正太、江良至 ●原作:知念実希人(小説『仮面病棟』/実業之日本社)
架空OL日記
私的評価★★☆☆☆☆☆☆☆☆
(2020日本)
憂鬱な月曜日の朝。銀行員OLの“私”(バカリズムさん)の1週間が始まった。眠気に耐えながらもきっちりメイクして家を出る。ストレスフルな満員電車に揺られ、職場の最寄り駅で合流するのは社内で一番仲良しの同期=マキ(夏帆さん)。私と価値観の近いマキとの会話は、時に激しく不毛ながらも不思議に盛り上がる。会社の更衣室で後輩のサエ(佐藤玲さん)と入社8年目の小峰(臼田あさ美さん)、10年目の酒木(山田真歩さん)が加わり、いつものように就業前のおしゃべりに華が咲く…。
(映画『架空OL日記』公式サイト「STORY」より引用)
www.kaku-ol.jp
をとこもすなる日記といふものを をむなもしてみんとてするなり
バカリズムさんが、匿名でOLになりすまして書き綴ったブログ〝架空OL日記〟が本になり、テレビドラマになり、ついには映画になったということらしい。
体裁を見ると『男が書く日記と言うものを女である私も書いてみた』という紀貫之の〝土佐日記〟へのオマージュというか、パロディのつもりで始めたのだろうかね?
バカリズムさんは、鋭い人間観察力で、人の業を面白可笑しく突いて、独特の笑いに仕立てるスタイルを確立されたパイオニア的存在だと思う。
本作も、OLの日常をつぶさに観察して、毒を含んだ諧謔味をふんだんに織り込みながらも、決してコメディに仕立てることなく、むしろ演者がごくごく真面目にドラマに徹していることで、却って皮肉が効いた面白さが際立ったという印象だ。
しかし…
正直、ボクの中の女性アレルギーがひどくなっただけ。
おそらく、OL(最近はOLという言葉も差別的表現らしいが、あえてここでは使うことを容赦願う)の方々にとっては、あるあるなエピソード満載なのかとは思う。
しかし、OLたちに邪魔者扱いされる管理職である〝男〟と、今や同じ立場の自分には、とても手放しで笑えるカンジにはならなかった。せいぜい、苦笑い^^;
たぶん、自分が20代とか若くて組織の中での立場が受け身一方だった頃なら、フツーに笑って観てられたと思う。
ということで、あくまで個人的な感想・評価なので、★は厳しめでスマン。
ところで、どうやってネタを仕込んだんだろう?
特に、女子更衣室という聖域の中での出来事や会話は、男どもには知りようがないから奔放に振る舞っているワケで、なんか『???』なカンジだけど……。
●監督:住田崇 ●脚本・原作:バカリズム(小説『架空OL日記』/小学館文庫) ●主題歌:吉澤嘉代子『月曜日戦争』(日本クラウン)
街の上で
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
「誰も見ることはないけど 確かにここに存在してる」
下北沢の古着屋で働いている荒川青(あお/若葉竜也さん)。
青は基本的にひとりで行動している。
たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。
口数が多くもなく、少なくもなく。
ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。
事足りてしまうから。
そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。
(映画『街の上で』公式サイト「STORY」より引用)
machinouede.com
「誰も見ることはないけど 確かにここに存在してる」って、この映画のこと? ちゃんと見つけて、遠方だったけど、観に行ったよ(^^)
下北沢──演劇、映画、文藝、藝術、音楽…さまざまなジャンルのクリエイター(の卵)たちを呼び寄せる街。
何かを成し遂げようと息巻く挑戦者たちの熱気が迸る街。
そして、何者にもなれずに地縛霊と化した魂の彷徨う街。
そんな街の片隅に店を構える古着屋。
そのカウンターで、荒川青は、いつも本を読みながら、店番をしている。
店を閉めたら、ふらっと弾き語りのライブに立ち寄ったり、狭いカウンターバーで飲んだり、休みの日は、古本屋で物色したあと、カフェ飯に行ってマスターと駄弁ったり。
彼の日常は、下北沢の街を当てもなくひらひらと漂っているようだ。
物語にとって、主人公が何かを成し遂げることは、大きな区切りであり、ままあるエピローグでもある。
今泉力哉さんは、そういう手法で映画を撮っていない、そんな気がする。
むしろ、成し遂げられなかったことによって生まれる様々な感情や、関係の微妙な変化に寄り添って、物語をつづっているような気がする。
荒川青は、彼女の〝彼氏〟になれなかった。美大生の卒制映画の〝出演者〟になれなかった。そして恐らく、彼は当初目指していた〝ミュージシャン〟になれなかった。
〝なれなかった〟のか〝選ばれなかった〟のか?──いずれにしても、彼は喪失感を重ねている。
そして、失ってなお、彼は舞台を降りきれずに、辺りを漂い続けるのだ。
本懐を遂げられなかった無念の魂が、地縛霊となって成仏できずにいるように。
古本屋のバイトの田辺冬子(古川琴音さん)も、選ばれなかった人だ。
彼女の場合、店の主人に思いを寄せていたのに、彼が突然他界してしまって、まさに置き去りにされたような状況だった。
時おり、亡き店主を偲ぶように、留守電のアナウンスの声を聴く。
録音された店主の声は、永遠に変わらない。
店主はすでにこの世にいないのに、確かにそこに在ったことを穏やかに語る留守電の声。
しかし、それは、わざわざアプローチしなければ、誰にも気づいてもらえない、ささやかな存在だ。
その儚さを身をもって知る冬子だから、選ばれずに日の目を見ることのなかった青の出演シーン全カットに対して、学生監督に直接抗議の声をあげたのだろう。
報われないこと。
果たせなかった思い。
でも、それは確かにそこに在った。
報われなくとも、日常は繰り返す。
今となっては、そのことが、とても素晴らしいことだと思い知る。
今泉監督の映画は、エンディングでは終わらない。
クレジットロールの先に、まだ登場人物たちの日常が続いていくのだ。
ささやかだけど、興味深い日常の冒険が待っていると思うと、ドキドキする。
城定イハ(中田青渚さん)は、なかなかズルい。
おそらく、ほとんど盛り上がらない荒川青の日常の中で、最も胸ときめかされる一夜限りのダイアログだ。
彼女は、軽妙な関西弁で語りかけ、絶妙な間合いで青の心に詰め寄ってくる。
いや、映画を観ているボクの心にも詰め寄って来ていた^^;
男女間の友情を認めるなら、とても居心地のよい友人だと思うけど、ちょっと意地悪なカンジでイジってきそうなところが面倒くさいかもwww
「朝ドラ出てますよね?」ってのがツボってしまった。
成田凌さんは今期の朝ドラ『おちょやん』に天海一平役で出てる最中だし、同じく若葉竜也さんも助監督役で出てたし、打ち上げのシーンで顔抜かれた倉悠貴さんもヨシヲ役で出てたし、朝ドラ俳優だらけじゃがねwww
●監督:今泉力哉 ●脚本:今泉力哉、大橋裕之 ●音楽:入江 陽 ●主題歌:ラッキーオールドサン『街の人』(NEW FOLK / Mastard Records)
砕け散るところを見せてあげる
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
〈常識を覆す、衝撃の愛の物語〉
平凡な日々を送る濱田清澄(中川大志さん)はある日、学年一の嫌われ者と呼ばれる孤独な少女・蔵本玻璃(石井杏奈さん)に出会う。
玻璃は救いの手を差し伸べてくれる清澄に徐々に心を開くようになるが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。その秘密に気づき始めた清澄に<恐るべき危険>が迫り、友人の田丸(井之脇 海さん)や尾崎姉妹(姉:松井愛莉さん/妹:清原果耶さん)も心配する中、物語は予測できない衝撃の展開を見せていく。
この物語は、ラブストーリーなのか、サスペンスなのか…。ラストは世代を超えた壮大な愛に包まれる。
(映画『砕け散るところを見せてあげる』公式サイト「STORY」より引用)
kudakechiru.jp
ネタバレなしに書くのは難しいかなぁ…?
でも、できるだけ頑張ってみる。
高校一年生の玻璃は、まるでボクが小学生時代に体験したようなイジメに遭っていました。そう、幼稚だけど陰湿なイジメ。
それに気づいて、放っておけなかったのが三年生の清澄。
最初、助けてくれた清澄に対して、野良猫のように金切り声をあげて威嚇して走り出した玻璃が、粘り強く助けの手を差し伸べる清澄に次第に心を開いていくのは、まぁラブストーリー的展開としてはありがちなのでしょうが、この物語は、たぶん、ラブストーリーじゃないのでしょう。
あこの後はサスペンスに満ちた展開を見せ、大いに心をかき乱されるのですが、ネタバレは慎みます。
高校時代の清澄と玻璃のエピソードだけ切り取ったら、すごく良かったと思います。
ていねいに、初々しい恋愛模様を紡いで見せてくれていた、そう思います。
しかし、その後、清澄が高校を卒業して以降の時代の展開については、どれほどの時間が経ったかも分からず、案外時代の節目をバシッと決めずにずるずるにつながったまま時間を進められたカンジに思えて、違和感を覚えました。
高校時代の濃密な描き方に比べて、その後の時代の描き方が極めてダイジェスト的というか、ほぼ清澄の回想的独白のみで進められたこともあって、観ている自分の感情が画面の中の展開に追いついていけないような、モヤッとした感情にじわじわと支配されてしまったのです。しかも、終いには誰の回想なのかも曖昧なカンジになってしまって…。
ボクが女性で、玻璃だったら、違った印象を持つんでしょうか? 分かりません。想像すべくもありません。
そして、ボクが玻璃だったら…たぶん、長らく鬱を患った挙句、救いようのない人生を送ったのではないか、そんな風に思えたんですが……玻璃は違ったようです。
一度しかない人生、事件・事故・災害等の傷をいつまでも引きずるのはもったいないな、というのが一般的なボクの考え方です。
固執してしまわずにはいられない気持ちも理解はしますが、いつかどこかで自分自身の人生に向き合って、なんとか前を向いてほしい…まぁ、希望的な感情です。希望的な、というのは、そうは言っても、ずっと心の奥底にしまい込んだまま、何も無かったかのようにその後の人生を歩むことは、実際には難しいだろうな、とも思っているからです。
だから、玻璃の、屈託のない笑顔は、どれほどの感情を飲み込んだ末にたどりついたモノなのか──。
そこがとても大事だと思うのですが、画面からは十分に伝わってこない──ラッシュのように流れ去る回想映像の中では、感慨に浸り、玻璃の内心を深く慮るだけの時間的なゆとりが足りなかった…観終えたあとに、そう思ってしまったのです。
おそらく、ネタバレを隠したいが故の、小賢しい演出のせいではないかと。
冒頭で、ネタバレさせてから回想の高校時代にトリップして見せてくれれば、よりスッキリと感情を高ぶらせてエンディングを迎えられたのではないかと思うんですが、どうでしょうか?
たぶん、この作品は一回観てネタバレしたあと、二回目に観た方が、より一層感動できるんじゃないか──そんな気がしました。
イイ作品だけど、ちょっとだけ惜しい。
●監督・脚本・編集:SABU ●音楽:松本淳一 ●主題歌:琉衣『Day Dream~白昼夢~』(LDH Records) ●原作:竹宮ゆゆこ(小説『砕け散るところを見せてあげる』/新潮文庫nex刊)
バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら
私的評価★★★★★★★★★★
(2021日本)
もしも日本を代表する名脇役100人で映画を作ったら…
映画はちゃんと完成するのか!?
富士山の麓にあるのどかな撮影所バイプレウッド。
民放各局の連ドラや映画など沢山の組が撮影していて100人を越える役者たちで大賑わい。
田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一ら元祖バイプレイヤーズもネット連ドラを撮影中。
主演は有村架純だ。
楽しく撮影が始まろうとした時、有村が共演している犬の風(ふう)がいないことに気づく。
風は行方不明になっていた。
心配する有村に、田口、松重、光石は風に何があったのか語り始める。
一ヶ月前、濱田岳、柄本時生、菜々緒、高杉真宙、芳根京子ら若手の役者たちが「月のない夜の銀河鉄道」という自主映画の撮影を始めていた。
監督は濱田、主人公は小さなチワワだがラストに100人の役者がSLで祝杯をあげるという壮大なストーリー。
車掌役で参加してくれた役所広司もそのシーンの撮影を心待ちにしている。
だが…実は役者は全く集まっていない。しかも超低予算でスタッフを役者が兼務する有り様。
やがて主役のチワワは逃げ出し、SLも撮影目前でロケを断られ路頭に迷う始末。そのくせ濱田は監督風を吹かせるので菜々緒、高杉、芳根も呆れて濱田組を降りてしまう。
落ち込む濱田、時生を見かねた田口ら元祖バイプレは自分たちのスタジオのSLセットを貸してあげることに。
一方、菜々緒は敬愛する天海祐希と出くわす。
天海はバイプレウッドに買収話が上がっていることを憂いていた。
そこでバイプレウッドを愛する天海と菜々緒は一念発起、撮影所の存続をかけ署名を集めるためにバイプレウッド中の役者に声をかけはじめる。
かたや濱田と時生は再び100人の役者を集めるべく撮影を再開するが、同じスタジオには勝村政信や渡辺いっけいなど厄介な名脇役おじさんたちが大勢いて、ことあるごとに邪魔されストレスが膨らむ。
そんな若い彼らを陰ながら見守る田口、松重、光石は何か秘密を隠しているようで…
こうしてそれぞれの思いが交錯、やがて役者同士のぶつかりあいに発展!
犬の風もそれに触発されたのか撮影所中を駆けずり回り大暴れ!
連ドラ、大河、朝ドラ、映画チームなどバイプレウッド全体に嵐を呼ぶ大騒動を巻き起こす!
こんなんで100人の役者の映画は完成するのか!?
そしてそんなドタバタ悲喜劇を越えると映画史上初の試みのとんでもないラストが待っている!
100人だからこそ成し遂げられる未体験の温かな感動がスクリーンを包む!
(映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら』公式サイト「STORY」より引用)
byplayers.jp
『月のない夜の銀河鉄道』なのに…ま、それはエエねん。
大杉漣さんが亡くなられたとき、『バイプレイヤーズ』という番組のことを知りましたが、ついぞ観る機会に恵まれませんでした。大杉さんは、本作のテレビシリーズのこと、映画化のこと、アツく語っていたとかい言うようなことを、松重さんや田口さんらのお話から聞いていたように記憶していました。亡くなられてから3年も経つんですねぇ…。
で、劇場通いの中で本作の予告編を観たら、「本編を観ずにはいられんでしょう」と、興奮を掻き立てられてて、本日、やっとお目にかかることができた、そんな感慨に浸ったところであります。
モノづくりにかける情熱、特にアツい役者魂が全編にたぎる、素晴らしい作品でした。
民放各局・公共放送・映画などの人気作品のパロディを仕込んで、各撮影現場の映像を随所に織り込みながら、100人の名脇役(中には主役級も混じってますが)たちをちょいちょい出し入れして見せます。どこの現場に誰がいるのか、それを確認するだけでも、ワクワクしてきて、すごく楽しめそうです。
しかも、全員実名で本人役! なんてパラダイスな作品でしょうか!
ストーリーは、濱田岳さん率いる若手俳優5人組が自主映画を撮影する、というエピソードを軸に、撮影所の外資による買収話が絡み、一方で松重豊さん、田口トモロヲさん、光石研さん、遠藤憲一さんの元祖バイプレイヤーズが何か秘密を隠しているらしい、という、何やら落語の人情噺を彷彿とさせる仕掛けがいっぱいというお話。
転機は天気^^;
突然訪れた激しい雷雨と強風で撮影所はぐちゃぐちゃに。
天候の異変をいち早く察知した撮影所住まいの老犬・風(ふう)は、嵐の到来を予告するように各撮影所を走り回ってかき回した挙句に行方不明に……その先に見えた衝撃的な画に、一瞬凍り付いてしまいました。
この辺りの展開には、激しく胸をかき乱されて動悸が上ずってしまいましたが、そこからのストーリーの落とし方までは、実に素晴らしい演出だったと思いました。
もう、最後の方は、予想はしてても二度も三度も、ぶわっと涙腺崩壊させられましたよ。
とにかく、さり気なく映し出した〝一枚〟の演出、そのセンスに思わず拍手せずにはいられないほどの感激で胸の震えが止まらず、涙ダダもれにさせられました。
何と言うのか、出演者、制作者、観覧者、みんなの中に〝人を思いやる気持ち〟が溢れて止まない、そんな感慨に包まれました。
ボクの拙い文章では表しきれないほど、素晴らしい作品でした。
●監督:松居大悟 ●脚本:ふじきみつ彦、宮本武史 ●主題歌:Creepy Nuts『 Who am I』(ソニー・ミュージックレーベルズ)