一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

紅の拳銃

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

紅の拳銃
紅の拳銃 [DVD]

 (1961日本)

「また殺し屋の話ですか。勘弁してくださいよ。殺し屋なんて実際に居やあしねんだから。だいたい日本じゃあ殺し屋商売が、成り立つわけがないですよ」

 いきなり冒頭から「日本に殺し屋」が存在しえないという話を持ってきながら、殺し屋を育成していくという前半のくだり、のっけから、なかなか面白い展開です。

 殺し屋育成を依頼された石岡(垂水悟郎さん)と酒場で出会うプータローの中田(赤木圭一郎さん)。石岡がコルト45の構造図を広げながら銃の仕組みの講義を始めるところから、実際の撃ち方を中田に体得させていくまでの経緯は意外と時間を割いていて、映画の前半をマニアックに盛り上げています。

 石岡には盲目の妹、菊代(笹森礼子さん)がいて、菊代は、目が見えないながらも中田に惹かれます。中田はそんな菊代の気持ちに気付きつつも、恋人未満のギリギリのところまでしか、菊代に心を許さないように振る舞います。この辺りから、中田の過去そして現在に秘められた謎が、見るものを更に物語へと引き込んでしまうのです。

 話は石岡の依頼主小寺(芦田伸介さん)が、仕事で手を組む中国人マフィア劉(小沢栄太郎さん)と敵対する陳兄弟の殺しを中田にやらせる辺りから、陳兄弟のいる神戸へと舞台を移し、ほとんど息をつかせぬ展開でクライマックスになだれ込みます。

 陳兄弟の住む屋敷に乗り込んだ中田、そして小寺、劉らも入り乱れて、最後は意外な展開に…は、見てのお楽しみ。

 神戸の病院で目の治療を受け、目が見えるようになった菊代に姿を見せることなく、中田は東京行きの列車に乗って帰ります。ところがその列車には、石岡と菊代も乗っていて…。

 今時、こんな脚本はないですよねぇ。意外性もあって、けっこう好きです。中田と菊代は幸せになれるのかなぁ…。なんてな。

 赤木圭一郎さんの遺作です。本作を撮ったあと、撮影所内のゴーカート事故でわずか21歳の人生を終えました。実質2年半の俳優生活で、15本の主演作を含む30本ほどの出演作を撮っているのは驚異的ですが、もっと見たかった俳優さんです。

●監督:牛原陽一