一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

拳銃無頼帖 抜き射ちの竜

私的評価★★★★★★★☆☆☆

拳銃無頼帖 抜き射ちの竜
拳銃無頼帖 抜き射ちの竜 [DVD]

 (1960日本)

 ルガー・オートマチックを操り、相手の利き腕の肩をぶち抜いて使い物にならなくする凄腕で、“抜き射ちの竜”という異名を持つ剣崎竜二(赤木圭一郎さん)が、銀座の裏通りの怪しげな医院から退院しました。竜二は宮地組の組長らを射ったあと、麻薬の禁断症状で気を失って倒れ、“コルトの銀(宍戸錠さん)”によって医院に担ぎ込まれていたのです。竜二の入院費用を出したのは楊三元(西村晃さん)という麻薬組織のボスで、竜二は楊の用心棒として雇われることになりました。楊は竜二にブティックのマダムの房江(香月美奈子さん)を与えようとしますが、竜二は彼女の部屋で弟分の圭吉(沢本忠雄さん)を見つけます。圭吉は八百長のレッテルを貼られたボクサーで、惚れた房江のもとに隠れていましたが、堀田組の捌く麻薬に毒されてボロボロになっていました。ある日楊は竜二と銀に、張(藤村有弘さん)の取引に立ち会うよう命じましたが、その帰りに張の車は警察に停止させられ、麻薬の捜索を受けました。組織の内部に警察に通じている裏切り者がいるらしい、ということになり、楊は竜二の周りに頻繁に現れる石井みどり浅丘ルリ子さん)を疑いますが、みどりは竜二と恋仲になっており、竜二が彼女の疑いを晴らします。楊は堀田組と組んで麻薬の売買をしていましたが、堀田と楊は麻薬の売買を巡って対立し、楊は竜二に堀田を殺すことを命じます。


 麻薬と殺しというダークサイドのお話で、非常に緊張感の高い作品になっています。警察に通じている裏切り者は誰なのか、コルトの銀と竜二の歪んだ友情の顛末はどうなるのか、竜二とみどりの恋は、圭吉と房江は、そして楊の悪事は裁かれるのか、86分という短い映画ですが、非常に濃密なテンションです。

 相手を攻撃不能にして、決して殺さないスナイパー抜き射ちの竜が、その腕前のせいで心ならずも悪事の片棒を担ぐ羽目に陥ってしまう、そのやるせなさと虚しさが、心に迫ってきます。赤木圭一郎さんの作品はDVD化された映画しか見ていませんが、本作はエンターテインメントとして非常によくできていると思います。西村晃さんの怪しげな中国人とか、悪者の本気度がめちゃくちゃ高いのがイイのです。本気度が高いゆえ、追い込まれていく竜二の緊張感が、見るものにぐっと迫ってくるのです。

 浅丘ルリ子さんの顔を見ていて、今よりだいぶふっくらしているけど、痩せた細川ふみえさんみたいな可愛さがあるな、などと思ってしまいました。声もだいぶ幼い感じがします。

 この時代の男性は、コートの着こなしがカッコいいですねぇ。デザインもあるんでしょうけど、宍戸錠さんも赤木圭一郎さんもコートの短いエリを立てて、イキな感じです。羨ましいなぁ。

●監督:野口博志