一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

犬と歩けば チロリとタムラ

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

犬と歩けば~チロリとタムラ~ [DVD]

 (2004日本)

 岡村靖幸(ココリコ:田中直樹さん)はコンビニの前で1匹の捨て犬と出会い、餌を与えてやりました。その後、同棲している古川美和(りょうさん)の待つアパートへ戻りますが、彼女は、末期ガンを宣告された母親と引きこもりの妹の面倒を見るため、明日、アパートを引き払い、山口の実家へ里帰りするのでした。フリーターの靖幸は美和に出て行かれると、住む場所を失うため、一緒についていくことを打診しますが断られてしまい、頼りにしていた妹(吉村由美さん)の家からも追い出されます。
 途方にくれていた靖幸は、コンビニで出会った犬と再会します。そして、旧友の田村太郎(スネオヘアーさん)に雰囲気が似ていることから、タムラと名づけたその犬を連れていくことにします。
 靖幸はテレビで「アニマル・セラピー」の存在を知り、セラピードッグの訓練所を訪ねます。そして先生(大木トオルさん)から「君がどうするか決まるまで、タムラをここで預かる。その代わり、君もこの施設に寝泊りしてタムラの訓練をする。」という提案をされ、靖幸は、タムラと共にセラピードッグのトレーナーとしての居場所を見つけるのでした。一緒にトレーニングしている犬たちと療養施設をまわるようになり、そこでタムラが伊藤のおじいさん(青木富夫さん)を元気づける姿に感激します。やがて、伊藤のおじいさんの死と、彼の残したタムラへの感謝の気持ちに動かされ、靖幸はタムラを連れて美和の元へ旅立ちます…。


 「犬と歩けば チロリとタムラ」は国際セラピードッグ協会の公認映画なんだそうです。ちなみに訓練所の先生役の大木トオルさんは、ブルース歌手として有名ですが、実は国際セラピードッグ協会の代表を務めてらっしゃいます。実際に登場するセラピードッグと人々の交流するシーンは、セリフを抑えたドキュメンタリー風で、セラピードッグの宣伝用の映像という感じがします。その分、ドラマ部分が分断されている印象は否めません。

 おまけにドラマ部分の終わりの方は、かなりあっさりしています。途中、美和と引きこもりの妹・美紀(藤田陽子さん)の緊迫したやりとりの部分などからは、かなり息苦しいドラマ展開が期待されたワケですが、靖幸がタムラを美和に引き渡したあと、とても安易でぬるい解決が待ってます。このあたりの構成は、セラピードッグの役割が主題なんでしょうねぇ。

 靖幸がセラピードッグのトレーナーとして、「なんのとりえもない自分」から自分の居場所を見つけて自立していく一連のエピソードはイイですね。美紀がタムラに釣られて部屋を出てくるエピソードも、唐突な感はありますが、抑えが利いていて、いい感じでした。

 靖幸が妹の夫の剛(ラーメンズ片桐仁さん)に連れられてペット同伴可の居酒屋で、タムラと一夜を過ごすシーンには、渡辺哲さん、洞口依子さん、寺島進さん、はなわさんが登場します。ほとんどセリフらしいセリフもない出演ですが、贅沢な脇役ですね。

 ラーメンズの片桐さんとココリコの田中さんは、本業のお笑いの方でもかなりキレていると思いますが、俳優としてもかなりイイですね。

 動物がメインで出てくる映画というと、妙に「泣かせてやろう」という作品が多いですが、本作はそんな力みもなく、実際泣かされることもなく、よかったです。タレントとして訓練された動物たちとは異なり、タムラの表情やしぐさはとてもナチュラルでした。どうでもイイ話ですが、うちの犬とよく似ています。

●監督:篠崎誠