一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

国際秘密警察 指令第8号

私的評価★★★★★★★☆☆☆

国際秘密警察 指令第8号

 (1963日本)

 ベトナム戦争がまだ始まる前の南ベトナムサイゴンで、政府の建設調査官クエンと豊光物産の秋元(夏木陽介さん)が、精油プラント建設をめぐって会談をしています。クエンは会談を終えて路地に出てきたところを、走り寄ってきた車から撃たれ、暗殺されてしまいました。同じころパリの片隅のカフェで、国際秘密警察の北見次郎(三橋達也さん)が、8年前に死んだはずのスパイ、ステファン・ヤゴツキーの組織に潜入するよう指令を受けました。一方、東京の豊光物産本社では、精油プラント建設の入札をめぐって、パイプ役のクエンが死んだため、今後の対策を協議していました。ところが、サイゴン駐在の秋元が予定外の帰国をすると連絡してきたことで、急遽同僚の江崎夏雄(佐藤允さん)を羽田空港へ迎えにやることにします。しかし、空港に着いた秋元は、江崎の目の前で、ギャングの一味に誘拐されてしまうのでした。豊光物産では江崎を名古屋から船でサイゴン支局に派遣することを決め、彼に暗号のキーを託します。そのころ、パリから羽田に到着した北見が、国際的な武器商人、ルドルフ・ケント(ジェリー伊藤さん)の事務所に合流しました。所長の野々崎(浜村純さん)は、北見に部下の手島(伊藤久哉さん)や周(天本英世さん)をつけ、江崎を追跡させます。江崎は名古屋へ向かう列車の中で知り合ったモデルの冴子(水野久美さん)とともに、手島たちに拉致され、ケントの武器密輸船でサイゴンに向かうことになりました。


 う〜む、スパイ・アクション映画…なのかな、一応。1962年の「007は殺しの番号(リバイバル上映からはドクター・ノオ)」の影響を受けて作られたんですかね? しかし、この映画、三橋さんが主役ですか? 主役は商社マン江崎の、佐藤允さんの方でしょ? そのへんがジェームズ・ボンドナポレオン・ソロ、電撃フリントらのスーパー・エージェントを主役にしたスパイ映画と、ちょっと雰囲気違うような気がするんですよね。だけど、意外にも、三橋さんの北見次郎、カッコよかったんですよ。やられた気分。

 これ、思わず失笑してまいました。暗号ってのが、なんで大切なのか分からないんですよ。なんか知らんけど、精油プラント建設の入札をめぐって、暗号でやり取りするみたいなんだけど、いったい誰と誰の間で暗号のやり取りが行われ、それが入札にどう関わってくるのか、合理的な説明は一切ないんですよ。悪の組織も、なんでそんなに暗号のキーを躍起になって捜してるのか、不思議…^^;)。雰囲気で「暗号が機密事項として大事なんだぁ!」とイキって押し切る強引さを感じて、笑ってしまいます。ま、時代的なモンも大いにあるとは思いますが、なんとなく忍者が活躍する時代劇のにおいを嗅いでしまったようで、フフフってね。

 あとね、日本人が外国人を演じるような、怪しいB級映画の雰囲気も、かなりきてますよね。

 でもね、商社マンが国際的な取引のためしのぎを削る中、政情や闇社会の駆け引きに巻き込まれ、翻弄されていくストーリーは、意外とサスペンスに満ちているような気がするんです。特に、誰も助けに来れない密輸船での脱出劇のくだりなどは、かなりハラハラどきどきもので、秋元が撃たれて海に落ちてしまうあたりは、かなりハードボイルドです。それに、日本に戻ってのクライマックスは、ちょっとせつなくて、泣けるんです。いいじゃないですか。大好きだな、こういう映画。

 実は全部で5作撮られた“国際秘密警察シリーズ”の、記念すべき第1作なんだそうです。しかし、こんなにおもしろいのに、本作なんかビデオ化すらされてないんだとか。今回は、以前CS日本映画専門チャンネル東宝娯楽シアターで放映された番組を、ビデオ録画してたものを鑑賞しました。なんとかDVD化されないかな? DVD-BOXのみの限定注文生産品でも、必ず買うんだけどな、という勢いです。

 気になった方は、たのみこむでお願いしましょう。

●監督:杉江繁男