一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

美女と液体人間

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

美女と液体人間  [東宝DVD名作セレクション]

 (1958日本)

 東宝特撮変身人間シリーズ第1弾です。


 東京で麻薬を盗み出した男が、身に着けていた衣服やアクセサリーすべてを残して、雨の中で跡形もなく消えるという不思議な事件が起こります。富永捜査一課長(平田昭彦さん)ら捜査当局は、消えた男を麻薬密売ギャングの三崎と割り出し、三崎の女でキャバレー“ホムラ”の人気歌手・新井千加子(白川由美さん)を取調べます。千加子は、三崎が持ち逃げした麻薬の行方を追うギャング団に狙われ、彼女のアパートに侵入した男に脅されますが、その男も三崎と同じように身体だけ消えてなくなってしまいます。千加子の目撃証言から、人間の形をしたアメーバのような液体=“液体人間”が、人間消失事件にかかわっていることが分かり、富永の友人の生物化学者・政田(佐原健二さん)は慄然としました。政田は富永をある病院へ案内すると、そこで原爆症にやつれた二人の男の話を聞かせます。彼らは水爆実験のとき行方不明になった第二竜神丸と遭遇し、その船上で液体人間に仲間を次々と溶かされ、命からがら二人だけ逃げてきたというのです。捜査当局は科学者と手を組み、下水道に潜伏している液体人間をガソリンで焼き払う作戦に打って出ました。その作戦のさなか、千加子が三崎と手を組んでいた内田(佐藤允さん)に拉致され、麻薬を隠していた下水道の中を移動していたのです。すでに火の手が下水道内を広がり始めていました。


 ゴジララドン、サンダ…このころの東宝特撮映画は、原水爆・核の脅威を題材に、放射能を浴びて突然変異した怪物が人間に仕返しをするお話がいっぱいですねぇ。そういう時代だったのでしょう。今は廃棄された核の処分など、もっと脅威に感じなければいけないはずなんですけど、日本人は麻痺するほど馴らされてしまっているような気がします。知識としては知っているが、どこか他人事なんですね。いざ災害が発生すると、ボロボロ…恐ろしい時代だなぁ…。

 しかし、液体人間って、なんなんでしょう? 「液体であって、人間の精神活動も持っている」って…どう考えても、その精神活動の部分が読めないんですよねぇ。なに考えて行動してたの? 液体人間の正体は、第二竜神丸の最初の犠牲者6人だったの? 結局無作為に人間溶かして回ってた、ただのバケモンじゃない。俳優演じてないし…。

 特撮監督は円谷英二さんです。液体人間の特撮は、怪奇大作戦の第8話「光る通り魔」の燐光人間とそっくりです。というか本作の方がオリジナルでしょう。火炎で殲滅する結末も同じです。円谷プロは、けっこう二番煎じというか、焼き直しをしている作品を見かけます。

 白川由美さんはきれいで日本人離れしたスタイルです。けっこうボディラインのくっきり出る衣装が多いので、ドキドキします。

 下水道内で麻薬を手にして内田が「おめえがその気になってさばいたら、トランクいっぱいの5千円札だよ」と言います。聖徳太子の1万円札が発行されたのはこの年(1958年)の12月1日のことです。

●監督:本多猪四郎 ●特技監督円谷英二