一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

玩具修理者

私的評価★★★☆☆☆☆☆☆☆

玩具修理者 [DVD]

 (2001日本)

中に心でもあると思ったのかね?

 ブリキのロボットなどのアンティーク・トイが並ぶおもちゃ屋に、サングラスをかけた女(田中麗奈さん)が現れました。彼女は店で働く高校生の道雄(忍成修吾さん)に、幼いころに経験したおもちゃにまつわる自分の不思議な思い出を語り始めます。それは、この世のものなら何でも直してくれる玩具修理者“ようぐそうとほうとふ(姿月あさとさん、声:美輪明宏さん)”の話でした。“ようぐそうとほうとふ”は、どこをどう直して欲しいか、頼んだとおりにしか直してくれません。その上、たくさんのおもちゃを一端バラしてから同時に組み立て直すように修理するので、ときどきほかの部品が入り混じってしまうといいます。ある夏の日、赤ん坊の弟のお守りをしていた彼女は、誤って弟を死なせてしまいました。弟を生き返らせるため、彼女は“ようぐそうとほうとふ”の元へ行きます。そして、弟の修理は無事終わったかに思えました…。


 幻想的な美しさ満載の映像です。淡く暖かい光に彩られたアンティーク・トイのおもちゃ屋がきれいです。“ようぐそうとほうとふ”は森の中に廃棄されたタンクの中にいます。タンクのある幻想的な森の風景は、ますむらひろしさんの漫画を思い起こさせます。ファンタジーです。こういう映像、好きです。おもちゃを修理するために舞う“ようぐそうとほうとふ”の姿も幻想的で美しいと思います。ただ、こちらはボクの趣味じゃないかも…?

 死んだ弟を直してもらうために、少女がタンクの中の“ようぐそうとほうとうふ”に向かって一生懸命「どう直してもらいたいか」を、ひとつひとつ挙げていく様子に、せつなさが募ります。言ったことしか直してくれないから、一生懸命なのです。少女も右目を怪我していました。脚も痛めています。気を失うまで、一生懸命お願いします。愛しくなります。

 小林泰三さんの同名小説を原作にした、短編映画です。ホラーなのか、ファンタジーなのか…ああ、ウルトラQのリメイク版のサブタイトルにダーク・ファンタジーとついてます。これがぴったりかも。

 奥山和由さんの製作する映画は、耽美的というのか、ちょっと美意識が濃くて、好きになれないんですけど、本作は、いい方かな? 映像はきれいです。あとは、“死を修理する”という話をすんなり受け入れられるかどうか、という気がするのはボクだけですかね? ボクはちょっと違和感を覚えました。けれど、そのあたりを気にせず見進めれば、話し終えた後の女と道雄の会話のスリリングさに、はっとさせられ、そこそこ満足できるんではないか、と。ま、たかだか47分ですから。あんまり真剣な顔して見ないことですかね。

●監督:はくぶん ●原作:小林泰三(小説「玩具修理者」)