一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

マタンゴ

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

マタンゴ  [東宝DVD名作セレクション]

 (1963日本)

 男女7人の乗ったヨットが嵐にあい、南方のとある島に漂着しました。この島は鳥さえも避けて飛ぶほど奇妙な島で、食料になりそうなモノはホンのわずかとれるサツマイモのような植物の根とウミガメの卵くらい。7人は難破し座礁した帆船に乗り込みますが、一面カビだらけで、船内で見つかった消毒薬を使ってなんとか雨風をしのげる場に仕上げるのがやっとでした。船内にあった航海日誌によると、乗組員たちは食料を求めて2〜3人ずつ森の中に消えていき、帰ってこないまま誰もいなくなったようです。原因は森の中に異常に繁殖しているキノコを食べたせいらしく、キノコを食べた船員たちがどうなったかは不明でした。そのうち食料が底をつくことは容易に想像できる状況下で、7人の男女はそれぞれに勝手な行動を取り始めるようになり、ついにひとりの男が禁断のキノコを食べてしまいます。


 キノコを食べてキノコの化け物=マタンゴになるか、人間として餓死するか、極限の状況下で繰り広げられる人間の弱さや浅ましさを見せ付けられる、痛い作品です。マタンゴが怖いというよりも、極限下で人間がどんな行動をするか、それの方が怖かったです。とってもダークなホラー仕立ての作品ですね。

 子どものときに見ていたら、キノコが食べられなくなってしまいそうなほど、マタンゴの特撮も気味悪く仕上がっています。なんともいえない色彩のカビに覆われた難破船の船内の様子も、画面からカビ臭さが漂ってきそうな雰囲気でした。夢に出てきそうです。子どものころから、生理的に受け付けない種類の映像です。

 ラストのオチは、ある程度予想できました。予想できましたが、う〜む、絶望感漂うエンディングですね。好き嫌いだけで言うなら、嫌いな映画の終わり方です。が、人間ドラマとしてはスリリングで見応えある作品だと思います。

 天本英世さんがクレジットされているんですが、いつ出てきたのか分かりませんでした。どうも、マタンゴになりかけているキノコ人間だったようです。あれじゃあ、分かりません。

●監督:本多猪四郎 ●原作:星新一福島正実(小説「マタンゴ」) ●特技監督円谷英二