一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ULTRAMAN

私的評価★★★★★★★★★☆

ULTRAMAN [DVD]

 (2004日本)

 重大な病気を抱える息子・継夢(広田亮平くん)のため退官を決意した空自パイロット真木舜一(別所哲也さん)が同僚の倉島(永澤俊矢さん)とスクランブル発進し、謎の赤い火球と激突します。まばゆい光に包まれ、真木が薄れゆく意識の中で見たものは、銀色の巨人でした。幸い真木はほとんど無傷の状態で帰ってきたのですが、彼を密かに監視する者がいました。防衛庁の対バイオテロ研究機関BCSTの水原沙羅(遠山景織子さん)です。自衛隊を退官して星川航空でセスナのパイロットになった真木は、客として乗せた沙羅にピストルを突きつけられ、BCSTに拉致されました。そして、自分と同じように謎の青い火球に激突して生還した有働貴文(大澄賢也さん)の存在を知り、彼がその後、ヤモリと同化しザ・ワンと呼ばれるビーストに変身してしまったことを教えられます。ザ・ワンは監視の自衛隊員を抹殺し、隔離されていた硫黄島の基地から逃亡していました。真木は自分もビーストに変身してしまうのかという恐怖にかられ、拉致された地下室で怯えます。沙羅はザ・ワンが真木の存在を感知して、誘き出せると考えていました。そして、沙羅の予想どおり、ザ・ワンが真木を狙ってやってきましたが、ザ・ワンの自己進化速度は沙羅の計算を遙かに凌駕し、沙羅の作った毒入り銃弾がまったく効果がなかったばかりか、さらに多数のヤモリを体に取り込んで巨大化してしまったのです。暴れて大勢の狙撃手を殺戮したザ・ワンに行く手を阻まれる沙羅、そこへ地下室の重い鉄の扉を突き破って真木が現れました。真木はザ・ワンの振り回した尻尾に一撃をかまされ、壁に激突、一瞬気を失いますが、次の瞬間、彼は全身をまばゆい光に包まれ、銀色の巨人に変身したのです。


 大好きな小中和哉さんの監督作品です。

 特撮に“ゴジラ×メカゴジラ”の菊地雄一さんが起用されており、全編CGIだらけの本作ですが、光学撮影だけでは表現できないシーンの連続で、納得の映像でした。

 モチーフがウルトラマンの第1話「ウルトラ作戦第一号」であることはあきらかですが、それをかなりリアルに解釈して、ウルトラマンに変身してしまうことになった真木の激しい苦悩を軸に、冷徹な自衛隊の対応や周囲の人間たちのさまざまな反応をヒューマン・ドラマとして(特撮モノとしては)丁寧に描いています。ウルトラマンの造形がリアルタイプ(?)なことも含めて、大人向けのウルトラマンの映画かもしれません。

 銀色の巨人としてザ・ワンと戦うことを沙羅に求められ、真木が戦いを決心した後半は、息つく暇もないほど熱いドラマが展開されます。真木と継夢の親子愛、真木と妻の夫婦愛、真木と倉島の男の友情、沙羅が有働の婚約者であったこと、ウルトラマンのピンチに助けに来た倉島たち空自の戦闘機、リアル系のウルトラマンの造形は好きになれませんが、それが気にならないほど、ストーリーや映像で見せてくれます。ウルトラマン映画のひとつの完成形だと思います。

 主人公が空自のパイロットであること、そして、戦闘機の飛行、ウルトラマンザ・ワンの激しい空中戦、「空を飛ぶ特撮」というのも、円谷の原点なのだと思います。故・円谷英二さんは、東宝映画“空の大怪獣ラドン”で、空自の戦闘機の特撮に精力を傾けていたように、空を飛ぶことにとても憧れていたそうです。継夢の夢が「お父さんみたいなパイロットになること」という話で終わるのも、象徴的です。だいたい名前が“夢を継ぐ”なんて、あざといですもんね。とにかく、空を飛ぶ特撮シーンは、円谷英二さんが見たら、悔しがるんではないかと思えるほど、カッコよく仕上がっています。おいしゅうございました。満腹です。

●監督:小中和哉 ●脚本:長谷川圭一 ●特技監督菊地雄一