ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE

私的評価★★★★★★★☆☆☆

　（2003日本）

　“ウルトラマンコスモス”は、2001年〜2002年にかけて放送されたテレビシリーズで、この映画は、そのシリーズのその後、主人公・春野ムサシの“怪獣保護”の夢がひとつの結末を見る、いわば最終回的作品です。ウルトラマンコスモスのテレビ放映に当たっては、劇場版で“ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT*1”という作品が先行して上映され、少年時代の春野ムサシが初めてコスモスと出会うエピソードを語ってみせています。そしてテレビシリーズでは、一貫して“怪獣保護”という慈愛に満ちたコスモスとムサシのエピソードを繰り返し、テレビ放映自体ウルトラマンシリーズでは初めて1年を超える放映回数を数えています*2。2002年には“ウルトラマンコスモス 2 THE BLUE PLANET*3”と“ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET ムサシ(13才)少年編*4”が上映され、このとき初めてウルトラマンジャスティスが登場します。

　ムサシ（杉浦太陽くん）の立案で、鏑矢諸島で保護されていた怪獣たち、“友好巨鳥リドリアス”、“古代暴獣ゴルメデ”、“電撃怪獣ボルギルス”らを新天地“遊星ジュラン”へ移送する“ネオユートピア計画”実行のため、SRC宇宙センターでは輸送ロケット“コスモ・ノア”の打ち上げ準備が進められていました。そこへ、謎の大型円盤が飛来し、コスモ・ノアを破壊しようと巨大ロボット兵器が地上に放たれます。ムサシはウルトラマンコスモスと同化して巨大ロボット兵器の進撃を制止しましたが、ウルトラマンジャスティスが現れてコスモスを攻撃、コスモスはジャスティスの攻撃の前にあえなく敗れ、姿を消してしまいました。ジャスティスによって解放された巨大ロボット兵器がコスモ・ノアを破壊し、ジャスティスは宇宙正義の決定に従い、35時間後に地球上のすべての生物がリセットされることを地球人に宣告したのです。

　ウルトラマンコスモスを語るのは難しいです。ティガ・ダイナ・ガイアの平成の3部作、特にガイアがシリーズ全体としてドラマが展開する構成になっていたことを受けて、初代ウルトラマン的な1話完結で、より子ども向けを意識したストーリー作りを目指した結果、怪獣を殺さないウルトラマンが登場してしまったのです。怪獣も地球の一部、地球に住む仲間である、という考え方は、ガイアの後半で明示されたテーマで、必然的な流れではあったかもしれませんが、正直なところ、ボクは困惑しました。いや、殺伐としてきた今の日本だから、こんな慈愛に満ちたウルトラマンを子どもたちに見せることは、教育上好ましいことなのかもしれません。しかし、杉浦太陽くんが、あまりにも演技が下手クソ過ぎて、温室的で生ぬるく甘ったるい印象で、どうかすると子ども向けもむしろ幼児向けという雰囲気のシリーズに思えます。ま、ただのウルトラマン・ヲタクのおっさんが、とやかくいう筋合いでもないのでしょうね。平成3部作で、大人も楽しめるエンターテインメントとしてウルトラマンが復活したことを素直に喜んでいたものですから、少々ギャップについていけなくて…。

　で、本作です。前作の映画で唐突に現れたジャスティス、何を考え、何のために地球に来てコスモスと共闘したのか、何も語られないまま前作は終わりました。そして、本作ではいきなり地球人の敵として、“宇宙正義の体現者”として登場します。シロアリ駆除に例えられるこの宇宙正義の考え方は、オリジナル・ビデオ・シリーズの平成ウルトラセブンで語られるテーマに似ています。かなり重いテーマです。しかし、ジャスティスの心を動かしたのは、たった1匹の子犬と少女でした。甘い。けど、子ども向けにはこれくらい分かりやすい方がいいのかも。結局、ストーリーは壮大な風呂敷を広げながら、へたれな終わり方をします。なにゆえ唐突に現れた？“ウルトラマンレジェンド”よ。ああ、なんてお手軽な解決なんだ…と思いつつ、特撮はかなり見せてくれるし、ストーリーの細部に目をつぶれば、いいエピソードも多いので、見応えはあると思うのです。ジャスティスが人間の姿を借りているとき、吹石一恵さんが演じているのは新鮮ですね。違和感はあるけど…。

●監督：北浦嗣巳　●脚本：長谷川圭一／川上英幸　●特技監督：北浦嗣巳

*1:東海孝之助くんがムサシ少年を好演しています。