一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ブラック・レイン(Black Rain)

私的評価★★★★★★★☆☆☆

ブラック・レイン [DVD]

 (1989アメリカ)

 ニューヨークのレストランで、白昼日本人のヤクザが刃物で殺害されました。偶然現場に居合わせた刑事ニック(マイケル・ダグラスさん)とチャーリー(アンディ・ガルシアさん)は、逃走した犯人の佐藤(松田優作さん)を逮捕し、日本に護送することになりましたが、空港に迎えに来たニセ刑事たち(内田裕也さん、ガッツ石松さん、ほか)に、まんまと佐藤の身柄を奪われてしまいます。そのまま日本に滞在し、佐藤を追いかけることを決意したニックたちは、大阪府警の松本警部補(高倉健さん)に協力を依頼しました。麻薬密売の現場から現金を盗んだ過去をもつニックに対し、規律を重んじ、チームとして行動することを心がける謹厳実直な松本は、彼と距離を置きながらも捜査状況などを適宜教えます。佐藤のアジトを突き止めた大阪府警は、パチンコ屋の2階のアジトに踏み込み、空港のニセ刑事(ガッツ石松さん)らを逮捕しました。そして、現場に残されたドル紙幣の偽札から、佐藤がヤクザの親分の菅井(若山富三郎さん)と、偽札の原版を巡って争っていることが分かったのです。佐藤のアジトを捜索した夜、ホテルに帰る途中だったニックとチャーリーを黒いバイクの集団が襲い、チャーリーが佐藤に殺されてしまいました。松本とニックは佐藤の愛人(小野みゆきさん)を尾行し、製鉄所で取引をする菅井と佐藤を見つけますが、銃の撃ち合いの末、ふたりは佐藤に逃げられたばかりか、チャーリーの遺品の銃を撃ったカドでニックは国外退去を命ぜられ、松本は謹慎を言い渡されたのです。


 ほとんどが日本の大阪・神戸界隈で、日本人だらけなのですが、アメリカ映画です。なんで、アメリカ人が撮るとこんなにも雰囲気が変わってしまうんでしょうね、日本の風景。グリコのでっかいネオンサインはあっても、大阪はニューヨークと見まがうばかりのOSAKAに生まれ変わってしまうんですよね。不思議です。リドリー・スコット監督の映像美なんでしょうか?

 ブラック・レインの由来は、菅井が作中でニックに語る、戦時中の経験に基づいているようです。「防空壕の中で3日間B29の爆撃をやり過ごして地上に出てみたら、何もかも無くなっていて、黒い雨が降ってきた。アメリカは黒い雨でアメリカの価値観を日本に押し付け、やがて佐藤のような悪党が生まれた(のはアメリカのせいだ)」というような話です。ちょっと日本寄りの見方になっているところが、アメリカ映画なのにおもしろいですよね。

 本作は圧倒的に悪役の松田優作さんの存在感が際立ってます。松田さんは本作が遺作になってしまったワケですが、特に本作での気合の入りようは尋常でなかったように思います。ニューヨークのレストランでの最初の登場シーンに代表されるように、黒いコートに身を包んだ長身がビシッと画面に映え、サングラスを取った瞬間見せる、周りを圧するような力強い目線に、たちまちドキドキさせられてしまいます。あらゆるシーンで、立ち姿が様になり、目力でモノをいう、松田さんの最高の演技が見られる作品です。スタントを使わなかったバイク・チェイスでも、マイケル・ダグラスさんより松田優作さんの方がむちゃくちゃカッコよく見えるのは、こっちの思い込みがすぎますかね。

 菅井の子分に安岡力也さん、そして若き日の島木譲二さんが出演されています。モンモン背負ってふんどし一丁で逮捕されて悪態つくガッツ石松さんといい、シブイ不良オヤジ然とした内田裕也さんといい、悪役が揃って魅力的なのが、この映画のステキなところだと思います。

 ところで、この映画を見直して、「あ、ソウルで長瀬くんが韓国に残ることになった経緯は、この映画のプロットをもらってるのかな?」と思ったほど、異国で犯人を取り逃がしてそのまま滞在して追いかけるという設定がビビビと来ました。どうでもイイ話ですが。

●監督:Ridley Scott リドリー・スコット