一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ロード88 [出会い路、四国へ]

私的評価★★★★★★★★★☆

ロード88[出会い路、四国へ]
ロード88 [出会い路、四国へ] [DVD]

 (2004日本)

 ロード・ムービーはけっこう好きなジャンルです。


 元気いっぱいの女子高生・槇村明日香(村川絵梨さん)は、スケボーで四国88ヵ所巡りをする遍路の旅に出ました。彼女は慢性骨髄性白血病に冒され、ただ死を待つばかりの毎日を送っていたのですが、「結局死ぬとしても、最後まで頑張れば何か変わるかもしれない」と思い立ち、旅に出たのです。売れない芸人・佐藤勇太(小倉久寛さん)は、芸を見せて稼ぎながら四国88ヵ所を旅するというテレビ番組の企画のため、ママチャリで旅していました。妻と娘を亡くしたワケありの中年男性・伴野一朗(長谷川初範さん)は、食堂で出会った明日香が落とした写真を拾い、明日香を追いかけて遍路の旅に出ました。ふたりの男はそれぞれに死を覚悟するほどの悩みを抱えながら、明日香と出会うことで、生きていく力を取り戻していきます。そして、3人3様のゴールを目指す遍路旅が続きました。


 白血病だけど、決してそれを感じさせない明日香、勇太や伴野についても過不足なくバックグラウンドに抱える人生を映像にして見せていますが、それぞれのドラマを妙に深く掘り下げたりしていないところが、いい感じなんだと思います。ともすれば説教臭くなりがちなストーリーを、あまり見る者に負担を感じさせない雰囲気で見せる、だけど決してあっさりと流してしまうこともなく、とても自然な人と人との触れ合いが画面に溢れていて、最後には知らず知らずのうちに涙がほろほろとこぼれ落ちてしまうような、さわやかな感動があります。生きることの意味を重く問いかけない、それがこの映画を見終わったあとの、すがすがしさに通じています。

 勇太を追跡するテレビ・クルーの須藤理彩さん、津田寛治さんが見せる押し付けがましくない思いやり。いつも腹をすかせてる老遍路の神山繁さんが語る「色即是空空即是色」の心。ちょっとしか登場しないけれど、伴野の恍惚の父・高松英郎さん、明日香を診た松山の医師・富田靖子さん、勇太の万引きを咎めた巡査・三宅裕司さん、みなそれぞれに優しさの見える画面でした。

 クライマックスでかかる挿入歌「夢は夢のままで」(唄/古瀬陽子さん)が、とても印象的な使われ方でした。画面を注視しながらも、思わず聴き入ってしまいました。

 四国の風景・人・町の佇まい、四国を旅したくなりました。

 伴野の潔さ、明日香に対する思いやり、やさしい気持ちになりました。

 勇太の泥臭い生き様、ゴールで思わずあげた雄叫び、前向きな気持ちになりました。

 明日香の肩肘張らない生き方、がんばり方、とても癒されました。

 観賞後、心地よさばかりが残る、佳作です。

●監督:中村幻児