姑獲鳥の夏
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2005日本)
スクリーンでも見たんですが、DVDが発売されたので、見直しました。
見直してみて気づいたこと。
主要な配役、まぁ、原作とは別物なんだという観点で見れば、京極堂・中禅寺秋彦(堤真一さん)、関口巽(永瀬正敏さん)、木場修太郎(宮迫博之さん)、榎木津礼二郎(阿部寛さん)は、ありだなと思えてきました。久遠寺涼子役の原田知世さんは、何度観ても、かなりステキです。
ストーリーでは、なぜ梗子が牧朗を殺めたのか、そのへんのメンタリティがよく分からなかったですね。梗子についてはほとんど眠っている現在の描写しかありませんから。肝心のメインの事件の方は、やはり2度目の方がすんなり頭に入ってきました。何度か見直した方がいいかもしれません。ミステリでありながら、繰り返しの鑑賞に堪えうる佳作です。
演出面では、ミニチュアとはいえ、ホンモノの炎には、やはりCGではない生々しい迫力を感じますね。実相寺監督の作品では、テレビ・シリーズの“怪奇大作戦”第23話「呪いの壷」のクライマックスで、古寺炎上シーンのあまりの迫力に檀家から問い合わせの電話が局にあったという逸話を思い出しますが、監督以下特撮スタッフのこの辺りのこだわりには、感心させられます。
もう一点、クライマックスで温室の屋根に向かって落ちていくシーンについて、初見では作品を読んだときに頭に描いたイメージとかけ離れすぎていて、「あまりにもひどいのでがっかりしました」と書きましたが、今回は「これもありだな」と思ってしまいました。直前のヒロインのアップの表情、ここで彼女は最後の思いを観る者、そして対峙していた関口に伝えきったのだ、という演出なのだから、落ちていくときまで最後の表情を映す必然はなかったのですね。そう思うと、温室のガラスに映る彼女の姿が、えらく儚げで、美しいものに見えてきたから不思議です。こうして観るたびに発見があるというのはうれしいですね。
エンドクレジットの済んだあとの「この世には不思議なことなど何もないのだよ」というセリフ、これだけはやはり見直したあとも、閉口しました。
見直していて、なんか次回作を期待してしまいました。別に京極堂シリーズ全作品を撮る必要もないように思うのですが、映像的興味で「魍魎の匣」だけは観てみたい気がします。