一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

俺にさわると危ないぜ

私的評価★★★★★★★☆☆☆

俺にさわると危ないぜ [DVD]

 (1966日本)

 戦場カメラマンの本堂大介(小林旭さん)が、帰途の航空機で知り合ったスチュワーデス・沢之内ヨリ子(松原智恵子さん)とナイトクラブでデートを楽しんでいたところ、ヨリ子を執拗に追う謎の男が現れました。大介は東南アジア系のその男を追いかけて店の外へ出ますが、男は黒いタイツの三人組の女たちの襲撃を受け、大介の目の前で殺されてしまいました。大介は近くの公衆電話から警察に通報しますが、電話中にヨリ子は謎の一団に連れ去られてしまい、一方、殺しの現場を物陰で見ていた怪しい二人組の男たちによって、大介は殺人犯としてでっち上げられ、警察の取調べを受けることになってしまいます。やがて、ヨリ子を巡って、殺された男たちのグループと黒タイツの女たちのグループが暗躍しているらしいことが分かりますが、いったいヨリ子にはどんな秘密が…。


 てな具合で始まり、大介が出向いていく先々で、非常に都合よくキーマンが次々と登場し、実にテンポ良くストーリーが進んでいきます。ま、荒唐無稽さは007ばりですが、背景全面に使う原色の照明を多用しているのを見ると、鈴木清順監督作品のテイストを思い起こさせます。でも、ストーリーは鈴木作品ほどはちゃめちゃに破綻していかないので、ご安心を。

 日本版のスパイ映画といえば、“007は二度死ぬ”でタイガー田中(丹波哲郎さん)率いる忍者軍団というイメージがあるみたいですが、本作の本堂大介の下宿先が忍者の師範(?)百地(左朴全さん)の家で、いきなり門扉に「百地流忍法研究場・百地三斉」と看板掲げてるのには、少々ずっこけました。別に大介が忍術を使うワケではないのですが、百地はむしろ007のQの役割どころで、大介に笑気ガス弾やら抱え大砲やらの武器を調達してやってます。忍者の方は、実は黒タイツ軍団の役割なんです。

 ゴーゴーって、若い方には分からないですかね? かくいうボクも子ども時代にテレビでしか見たことない世界ですが、今の若いコたちがクラブで踊るような感じですね。黒タイツの女の子たちの表の姿が、ダンスホールのお立ち台で踊るゴーゴーチームという設定には時代を感じます。極彩色のペンキが飛び散ったような壁のお店の雰囲気は、サイケデリックと呼ばれると当時の若者風俗のキーワードです。そういえば、オースティン・パワーズで見られる60年代イギリスの風俗が、まんまですね。

 原作・脚本に都筑道夫先生が噛んでいるということで買いましたが、期待は裏切られませんでした。都筑先生らしいテンポのよい場面展開で、まったく飽きさせることなく最後まで一気に見られました。特に、「登場人物みんな敵か味方か疑わしい」という画面の雰囲気は、都筑先生の小説のイメージをよく出していると思います。また、都筑先生がちょっと苦手とおっしゃる「お色気」もそこそこ盛り込まれていて(ちょっと子どもと一緒に見るとマズイ場面も何ヶ所かあります)、十分楽しめます。お父さんには、初々しい松原智恵子さんの下着姿なんか、どーでしょうか?

●監督:長谷部安春 ●脚本:中西隆三都筑道夫 ●原作:都筑道夫(小説「三重露出」)