一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

魍魎の匣

私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆

魍魎の匣 スタンダード・エディション [DVD]

 (2007日本)

 1年以上のブランクを経て久方ぶりの更新は、本日劇場公開の京極堂シリーズ映画化第2弾です。不意の休みと劇場公開日が重なったので、これは見に行けということなんだな、と思って雨の中出かけて見ました。

 前作の姑獲鳥の夏でメガホンを取った実相寺監督が亡くなられて、本作は全く違ったテイストの映画になったのですが…。

 ま、いろいろツッコミたいところはあるのですが、まずは昭和20年代の東京の風景から。CGでない当時の東京の風景を求めて、上海ロケだそうです。上海ロケって、T・R・Yとかいろんな邦画の作成エピソードでよく耳にした話ですが、見進めていくうちに何かしら座りの悪さを覚えずにいられなくなってしまいました。交通整理をするお巡りさんのいる目抜き通り…よく見る場所だな…。映画の撮影所…微妙…ちょっと造りが大きすぎやせんかぇ? そして…あっ!…田舎道の川端になびく柳の風景がチラっと映った瞬間、もうダメでした。ボクにはあの柳の景色は、韓国や中国の田舎道の風景としてしか認識できません。あとはどんなに頑張っても大陸の風景にしか見えませんでした。オープンセット建てるほどの気概もカネもなかったのか、その辺は知りませんが、古い街並の建物なんかにしても、みんな造りが大振りな印象だし、狭い石造りの路地なんか、絶対日本じゃない。本末転倒かも知れないけれど、いっそ舞台を戦後の上海にしてもよかったんじゃないかな?なんて思ってしまいました。

 配役。関口巽永瀬正敏さんから椎名桔平さんに代わってました。永瀬さんは腎尿路結石のため降板したそうです。私も経験ありますが、痛み出したら悶絶して死にたくなります。相当痛かったのでしょうかねぇ? それから柚木陽子役の黒木瞳さん。原作は確か柚木加菜子の姉だったよな?…母親って…ま、いっか。設定はどうでもイイんだけど、この人の演技、あんまり好きじゃないんだよなぁ…声も。ま、人それぞれ好みはあるからねぇ。とりあえず。『関口巽、喋りすぎ!』あんなにベラベラ喋りだしたら止まらない関口は、なんか違う。途中でグダグダになってしまうダメさ加減がついに出なかったけど、いつもキリッとしている椎名さんのキャラでは仕方なかったのかねぇ?

 BGMのメインテーマ…最初に聞こえてきたときは、『あぁ、前作とはガラッとスタイリッシュな雰囲気に変えて来たな』と思ったのですが、2回目、3回目と被せてくるうちに、耳障りになってきました。ちょっと使いすぎなんと違うか?…そんな印象。ついでにメインテーマでエンドクレジットに入るのは予想できたけど、最後の東京事変の曲、まったく必然性のないタイアップだよ。映画の雰囲気にはそぐわない…というほどの映画でもないか。とうとうそこまで思ってしまった。

 肝心のストーリー。1,000p超のお話は、こんな風にダイジェストされて…後半から一気にフルスロットルで加速し、高速展開のサスペンスというよりは国籍・時代不明の近未来SFアクションみたいな映画になってしまいましたとさ。う〜む。これ以上何を語ろう…。画面がそういうテイストなんだから、仕方ないじゃないか。なんか、原作抜きにしても、おもしろさに欠けるんだよねぇ…ミステリーの持つドキドキ感が皆無だったんですよ。ストーリーを分かりやすくするため、仕方なかったのかも知れませんが。そのくせ、肢体切断のザワザワ感はときおり顔を覗けるので、見ていて肩ばかりこって仕方なかったです。ワシはホラー映画を見に来たワケやないのやが…! ついでに、本作では憑物落としは単なる余興でしかありません。憑物落としのカタルシスも得られません。

 匣の中身が気になって仕方がない…一番気になったのは、最後に登場する匣の中身です。ここをどんな映像で締めくくるのか、それがこの映画を見たかった理由でもあったのですが…劇場で確かめてください。その画なら、何も見せずに想像させる、という英断が欲しかった。

●監督:原田眞人 ●原作:京極夏彦(小説「魍魎の匣」)
ISBN:978-4061818125:detail