一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会

私的評価★★★★★★★★★☆

恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会 [DVD]

 (2004日本)

俳句はポップだ!

 2年後に統廃合を迫られている静岡県の松尾高校、野球部の県予選決勝であと1人アウトを取れば甲子園というところで、逆転サヨナラホームランを打たれ、夢は潰えます。校長(もたいまさこさん)は何でもいいから「我が校の名を残したい」と、さまざまなジャンルで全国大会出場を目指すことを掲げ、気弱な国語教師のマスオちゃんこと高田マスオ(杉本哲太さん)には8月13日から愛媛県松山市で行われる「俳句甲子園」を目指して、俳句部を立ち上げるよう告げました。写真部の顧問だったマスオちゃんは、急遽夏季限定で写真部を俳句部にすることにしますが、写真部には寡黙な土山(細山田隆人さん)1人しかいません。5人一組での出場となる俳句甲子園に出場するため、集まってきたのは漢字の書けない帰国子女の高山治子(関めぐみさん)、彼女の盗撮を繰り返す写真部のツッチーこと土山、野球部の万年補欠の山岸(橋爪遼さん)、見た目重視のチアリーダー部をクビになった太目のマコ(小林きな子さん)、治子を慕う不思議なウクレレ少女Pちゃん(蓮沼茜さん)。ライバルとなる前回全国優勝の古池高校の部員たちに小バカにされながらも、5人は俳句甲子園で全国優勝を目指すことになりました。


 もう、のっけから荻上監督の小技にくすぐられっ放しで、ぐいぐい引き込まれるようにして笑いました。マコ、なんで死ねないのに手すりにしがみついてんの? それを見てツッチー、冷静に「言い残すことは?」て、ありえんやん(^o^)。「切れ字」に対するベタなリアクションの連発、治子の山岸に対する「アンタのシンプルな顔で『ポップ』って言われても、説得力ないっつーの」を繰り返し使う手法も気に入りました。それから治子とツッチーの2度のからみ、図書館でのパンチラ、屋上でのキス、そのやりとりの絶妙さに、うれし恥ずかしな笑いが止まりませんでした。盗撮を繰り返すツッチーの描写なんか、高校時代の写真部の友人を思い出し、むちゃくちゃ親近感を覚えましたし、微妙に青くてエッチなところも本作のいいところですね。

 5人の個性がとてもいいです。引っ込み思案だったり、自信がなかったり、コンプレックスの塊だったり、投げやりだったり、お調子者だったり、文系の部活にありそうなメンバー構成で、この辺もツボにハマる要素です。このメンバーの個性が、後半の俳句甲子園の試合でも存分に引き出され、ダメさ加減も、情けなさも全部ひっくるめて、メタメタに打ちひしがれたあと、5人が敗者復活戦で再生していく過程をいい感じに盛り上げていると思うのです。青春ですねぇ…。

 あと、杉本さんのマスオちゃん先生の役作り、めちゃくちゃツボにハマリました。情けないところを見せながらも、肝心なところでは、グッとくるいいセリフを放ってたりして、いい感じです。治子の写真を現像していたツッチーに対して、「一生を切り取るという意味では、写真と俳句って、とても似ていると思うんですよ。こんないい写真が撮れるんだから、俳句だってきっと、いいものができると思うんだけどなぁ…」というセリフなんか、とても気になりました。それから同僚の女教師(高岡早紀さん)が好きなんですが、彼女と帰りの電車を待ち合わせる間、海辺の駅のホームで交わす会話、駅の周りの雰囲気、ほのぼのとしてとてもいい場面でした。

 松山ロケです。画面に出てくる海辺の風景や学校の雰囲気なんか、とてもいい感じですね。夏の青空、木々の緑、穏やかにきらめく水辺、瀬戸内の景色は、やはり美しいと思います(学校は静岡県の設定ですけど、どう考えても、海が太平洋には見えませんね^_^;)。個人的には、青空に向かって投げられた檸檬の画に魅かれました(かなり狙ったのが見え見えなんだけど、やはり綺麗なものは綺麗というしか…)。

 余談なんですが、俳句甲子園の句で「南風わたしはわたしらしく跳ぶ」という句が最後に出てきます。この句の後、青空を右から左に渡っていく一羽のサギが映るんですが、句は「飛ぶ」ではなく「跳ぶ」です。おそらく(ジャケットのイメージからも)句の意図は「跳ぶ」で間違いないんですが、サギが飛んでいくのがなんとも…なんか居心地の悪さを覚える言葉の誤りでした。

 最後にマスオちゃんのセリフ。「うまく詠もうなんてしなくてもいいんです。楽しんで詠んでください。楽しんで詠んだ俳句は、しっかり伝わるはずです。」久々に俳句を詠みたくなりました。

●監督:荻上直子