一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

若草物語

私的評価★★★★★★★★★☆

若草物語 [DVD]

 (1964日本)

 日活が誇る四大女優・吉永、浅丘、芦川、和泉の華やかな競演で、現代女性の愛のあり方や幸福な結婚を明るく健康的に描く青春超大作。

 若い後妻を持った父親の勇造(伊藤雄之助さん)を気遣って、高村家の由紀(浅丘ルリ子さん)、しずか(吉永小百合さん)、チエコ(和泉雅子さん)の三人姉妹は伊丹空港から日航機に乗り、東京へ嫁いだ長姉・早苗(芦川いづみさん)のところへ家出を決行した。三人揃っての出現に驚く早苗に、由紀たちは「お父さんの新婚の邪魔になるしね」と、すまして言った。年頃娘三人に突然飛び込まれた早苗と夫・宏一(内藤武敏さん)の生活はかきまわされ、しぶしぶ貯金の一部を出してアパートを借りてやるのだった。こうして小さなアパートで三人姉妹の生活が始まる-。
(日活公式サイトから引用)

www.nikkatsu.com


 今年は、芦川いづみさんのデビュー65周年だとかで、日活の出演作がDVD化されたそうなんですね。
 ボクから見れば、四姉妹ともずいぶん年上のお姉さま方なんですが、例えば家族で観ていた赤木圭一郎さんの映画*1なんかでも、芦川さんと浅丘さんがヒロインとして出演なさっていることが多く、ボクの親父の世代だと、目力の強い浅丘さんの方が人気が高かったのかな?と思うんですが、後追いでの鑑賞による個人的な感想で言うと、ボクは芦川さんの人懐っこい笑顔の方が好きでした。

 本作は、何年か前に断片的に見てたんで、うっすら記憶にはあったんですけど、改めて通しで観てみると、実に味わい深い名作だと気づきました。
 家出して東京に出てきた3人の妹たち。大阪弁で話すんですが、なんや時代なんかどうなんか、のんびり喋ってるカンジがします。とはいえ、この女優さんたちの関西訛りの役柄は、あんまり見ることがないので、たいへん貴重かもしれません。

 ストーリー的には、四姉妹それぞれのキャラが立っていて、特に三女・しずかの吉永さんの役どころが、すごく父親べったりで、もう見ていてかなりしんどかったです^^; 父親の若い後妻に嫉妬して家を飛び出したかと思うと、後妻とけんかして娘を頼って東京に出てきた父を猫かわいがりするように迎え入れる。もうトコトン駄目オヤジっぷりを見せ付ける父を、他の三姉妹が真っ当な言葉で嗜めると、父をいじめるなと姉妹に敵意むき出しで食ってかかって、一人父をかばうという徹底したファザコンぶり。基本、面倒見が良すぎて、息が詰まってしまうタイプかも、なんて思いました。

 メインテーマ的な、幼なじみの次郎(浜田光夫さん)をめぐる次女・由紀としずかのこじれた恋愛模様は、とっても面白かったです。特に浅丘さんと吉永さんのタイプの異なる二人の姉妹の恋愛に対するアプローチの仕方だとか、恋する女性の気持ちの揺らぎだとか、非常に丁寧に描かれていて、観ていてハラハラドキドキ、そしてモヤモヤヤキモキさせられて、もうなんだか彼女たちに振り回される男どもと一緒に、激しく感情を揺さぶられたカンジです。脚本が、非常に素晴らしい!

 そして、時代的にはまだまだ女性は働いていても結婚したら主婦になるのが当たり前みたいな頃でしょう。しかし、四姉妹それぞれの立ち位置で、女性の生き方や幸福の追求のあり様などを見せてくれ、これから先、次第に時代が変わっていくことを予感させられるところもある映画でした。

 また、デパートの売り場だとか、公園だとか、アパートや下宿などの住まいだとか、映し出される昭和の東京の街並みも、非常に郷愁をそそられ、なんとも言えず胸にジーンと沁みてしまいました。なんなんでしょうね、この感覚。さすがにこの映画の時代の昭和の風景は、ちょっと記憶に無いはずなんですけど、物心つく前でも、何かしら、記憶に刷り込まれてしまってるんですかね?

 まぁ、なんというのか。観終わった後、なんとも言えず、胸がじんわりとあったかくなる映画でした。名作だと思います。


●監督:森永健次郎 ●脚本:三木克巳