一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ラヂオの時間

私的評価★★★★★★★★★★

ラヂオの時間 スタンダード・エディション [DVD]

 (1997日本)

 パチンコ屋でアルバイトをする平凡な主婦・鈴木みやこ(鈴木京香さん)が書いたラジオドラマの脚本が、コンクールで採用され、深夜12時から生放送されることになりました。リハーサルも終わって、あとは本番を待つばかりとなったとき、突然主演女優の千本のっこ(戸田恵子さん)が役に不満をもらし、『パチンコ屋でアルバイトをする平凡な主婦じゃなく、ニューヨークの敏腕女性弁護士にしないと出演しない』とわがままを言い始めたことから、プロデューサーの牛島(西村雅彦さん)が次々と出演者の言いなりになって脚本をいじり始め、本番が始まっても設定がコロコロと変わるうち、ついには主演男優の浜村錠(細川俊之さん)の役が、途中で宇宙の彼方に消えてしまい、2度と帰ってこなくなるという、基本的なストーリーそのものが書き換えられてしまう事態に発展してしまいます。怒ったみやこは、スタジオ内に立てこもり、脚本どおりにストーリーを進めるよう訴えますが…。


 家族で鑑賞しました。実はこの作品も、今日が初見なんです。映画館に年に1、2回しか行かないし、テレビ放送時もタイミングがなかなか合わない生活してたので、有名な人気作ほど見てないこと多いんですよ。2000年秋に最初のDVDが出た当時も、東宝さんの税別6,000円という高価格設定に二の足を踏み、結局見送ってしまっていました。やっと半額というリーズナブルな価格で再発売になったので、ボクんちでも見られるようになった次第です。何度も言いますが、東宝さん、ロードショーでも十分稼いでるんだから、DVDでボッタくろうなんてしないでくださいな。いまだに一部のソフトは6,000円で発売しているようですし。

 ラジオドラマの生本番中のスタジオとミキシングルームで行われるシチュエーション・コメディは、学生時代放送部でラジオドラマを制作していたボクにとっては、たまらなくうれしい設定でした。特に効果音の音源が手に入らなくなり、咄嗟に用意できるもので効果音を創り出すというエピソードは、学生時代の効果音(SE)作りの過程を思い出させてくれ、うれしかったです。元音効担当者だった警備員役の藤村俊二さんのトボけた中にも、SE作りにかけた心意気の伝わるセリフに感激しました。三谷監督の心配りでしょうね。

 元々三谷監督自身の舞台作品だったものを映画化したわけですが、映画としてのデキもすばらしい上、観る者のテンションの持っていき方に舞台劇のテンポが見事にはまり、まさしく舞台を観終わったあとの充実感と余韻にひたれるお買い得なエンターテインメントです。

 のっけから次々と湧き出る問題に、何度も破綻しながら、つぎはぎだらけで進むラジオドラマに振り回されるプロデューサー、スタッフ、声優、そして主婦の素人放送作家。舞台のコンテンツだけあって、必要最低限のメンバーで誰一人として不要な出演者はないという絶妙な配役。特に近藤芳正さん演じるみやこの夫・鈴木四郎のような、見るからに危なっかしい爆弾を用意しておくあたりは、かなりの手練ですよね。

 笑いのツボを心得ている人は、エライ!と手放しで賞賛したくなります。三谷幸喜、スバラしい! 満点!!

●監督・原作・脚本:三谷幸喜