一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

Shall We ダンス?

私的評価★★★★★★★★★☆

Shall We ダンス? (初回限定版) [DVD]

 (1996日本)

 28で結婚、30で娘が生まれ、40過ぎて郊外にマイホーム、会社でも経理の責任者として同期のトップを走り、平凡だが幸せな生活を送っているはずの中年サラリーマン杉山正平(役所広司さん)は、何が不満ということもないけれど、なぜか人生に張り合いを見出せない毎日を送っていました。ある日めったにない部下との飲み会の帰り、電車のホームから見上げた社交ダンス教室の窓に、憂いをたたえた目で遠くを眺めながら佇む美女・岸川舞(草刈民代さん)の姿を目にした杉山は、彼女目当てにダンスを始めることになります。やがて、彼女は世界大会の準決勝にまで出た実力者であり、場末のダンス教室で指導している器ではないことが分かり、杉山は『私目当てでダンスをするなら来ないで欲しい』とキッパリ、舞に断られました。しかし、杉山はいつしか本気でダンスの魅力にはまり、ひたむきに練習するようになります。そしてそんな杉山を指導するうち、舞自身も見失っていた自分を取り戻して…。


 今さらなんですが、実は、今日が初見なんです。こんな有名な作品を10年もの間、一度も目にする機会がなかったのか?と言われそうですが、そうなんだから仕方ありません。敬愛してやまない竹中直人さん、渡辺えり子さんが出演なさっているので、間違いなくボクの嗜好にピッタリの作品であることは承知していたのですが、なんとなく今まで見ずじまいでした。初見の感想は、予想どおりでした。ただ、欲を言えば、竹中さんの怪演がもう少し見たかったかな、といったところですが、ワキなのでこれ以上目立ってもイケないですから、仕方ないですね。

 会社勤めに疲れを覚え始める40代のお父さんには、眩しくも羨ましい設定の映画ではないですかね? 自分に置き換えてみて、思い切ってダンスに限らず違う世界に飛び込むことができるかどうか、理屈じゃないんですよね。第3者的には、『そんなん、やってみたらエエんやん』と言えますが、歳を重ねると、心の柔軟さも失っているワケで、よほど大きなきっかけでもない限り、思い切って今の生活パターンを変えることは、とても勇気を必要とすることなのではないかと、自分では思っています(みんなそうかどうか、話したことないんで分かりません)。とりあえず、何度もためらいながらも、杉山はダンス教室の扉を開いたワケです。エライ。始めること、それがすべてだよな。

 ま、杉山と舞の『大人のロマンス』は、ハッキリ言って、よく分かりません。恋愛なのか、敬愛なのか、憧れなのか、ま、入り口で立ち止まってダベってる感じですかねぇ? なので、家庭崩壊までしませんけど、原日出子さん演じる杉山の妻の表情は、見ていて唯一『痛ましさ』を覚えるところです。でも、この夫婦の関係を膨らませてしまうと、泥沼になりそうだかんねぇ。柄本明さんの探偵がお節介焼くのが、軽くてイイんだろーなぁ。お節介焼いてるうちに、スッカリ自分も社交ダンスにはまってたりして、そんなにも社交ダンスは魅力的なのよ、って言いたげな演出です。監督が草刈さんにはまってまったんだから、仕方ないわな、そのへんは(笑)。

 そーゆー意味では、草刈さんの立ち居振る舞いなどには、とても魅力を感じますねぇ。監督の惚気が聞こえてきそうな映画です。やれやれ…。


 ま、家族で見ても笑えるラブコメですな。

●監督・原案・脚本:周防正行