一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

怪奇大作戦 セカンドファイル ゼウスの銃爪

私的評価★★★★★★★☆☆☆

怪奇大作戦 セカンドファイル ゼウスの銃爪 [DVD]

 (2007日本)

 白昼、突然人間が発火して死んでしまった! しかし不思議なことに、持ち物や衣服はほとんど焼け残っていた。やがて第2の人体発火焼死事件が起こる。その背後に隠された真実を巡り、牧史郎らS.R.I.のメンバーが立ち上がった。


 S.R.I.(Sience Research Institute=科学捜査研究所)が38年ぶりに帰ってきた!

 犯罪捜査に科学のメスを!---今ではC.S.I.だとか科捜研だとかが活躍するサスペンスドラマが当たり前に見られますが、本邦のテレビドラマで科学的捜査を前面に打ち出した番組としては『怪奇大作戦』が草分けなのではないでしょうか? 時間的にも金曜19時、ウルトラマンの放送枠でしたから、少年時代に毎週ドキドキわくわくしながら見ていました(『散歩する首』の回なんか、予告編だけで怖くて夜中にひとりで寝られなくなるほど興奮してしまったと、記憶しています)。

 さて、38年前の放送時に比べて、現代は良くも悪くも科学(らしいもの)の情報が氾濫しているため、我々も子ども騙しの理屈では納得できないようになってしまっています。しかし、理屈っぽすぎると、38年前の怪奇大作戦のわくわくするようなテイストは損なわれてしまうような気がします。実際、本作の設定はけっこう理屈っぽいのですが、その辺はストーリーの方でバランスをとっているのかな?


 当時のボクは、主役の牧史郎を演じていた岸田森さんが大好きでした。役柄的にも風貌的にも、そして凛とした喋り口、よく響く声柄から、ボクの中では(ウルトラマン以外の人間界での)唯一のヒーローでした。後に岸田さんが若くして亡くなられたというニュースを見て、「あぁ、怪奇大作戦の続編はもう撮れないんだ」と、子ども心にもすごく残念に思ったものです。なので、今回のリメイクで一番気になったのは、牧史郎を誰が演じるのか、という点でした。それが、西島秀俊さんだったんですね。彼は、声質と喋り口が岸田さんとは異なりおとなしめなので、「ちょっと違うなぁ」と感じました。岸田版牧史郎は、関係者に対して強い口調で迫ったりするような激しさも持ち合わせていたのですが、西島版牧史郎は、どっちかと言うと情熱を内に秘め、ここぞというときしか声を荒げないという、ちょっと大人なイメージに変わっていました。岸田版牧史郎のときには、勝呂誉さん演じた三沢京助が猪突猛進型と評されるような、真っ直ぐに正義感をほとばしらせるキャラだったので、回によって牧が突っ走り三沢がいさめる、三沢が突っ走り牧がなだめるという展開が26話の中には見られました。今回はキャラの棲み分けを明確にしたのでしょうか? ちょっと西島版牧史郎は、センチメンタルなところや思慮深いところが強調されすぎている気もします。

 三沢京助役のココリコ田中直樹さん、これは見るまでどうなんだろう?と思ってましたが、正義感に燃えるキャラ作り、かなり良かったです。元々バラエティのドラマなんかでも演技は悪くないと思っていたのですが、意外とはまっていたので驚きました。

 ノムこと野村洋役の青山草太さんは、ウルトラマンマックスの主演でした。マックスのころよりはセリフとか、うまくなったかな? ちょっとお茶目なムードメーカー的ノムのキャラとしては、良かったと思います。

 的矢所長(岸部一徳さん)と町田警部(寺田農さん)のマトやんマチやんコンビは…これはボク的には、ちょっといただけませんでした。原保美さんと小林昭二さんのコンビとは、まったくイメージが違っています。岸部さんも寺田さんもほかのドラマで露出し過ぎていて、独特の毒を持ってしまっているので、ボクの中で余計なイメージがつきまとってしまうせいもあるでしょうね。それを差し引いても、今回のドラマの中で、英語でまくし立てて謎の外国人2人組に手を引かせた的矢所長の出番は、かなり違和感覚えました。テレビ朝日系の『相棒』で、警察官僚のトップの役で出てくる岸部さんを思い出して、的矢所長が寝技の得意なイヤらしいキャラに思えてしまいました。

 今回一番変わったのは、サー坊こと小川さおり(美波さん)ですよねぇ…。38年前はノムに「S.R.I.のお茶汲み」と揶揄された彼女も、現代版はITを駆使して情報収集や分析捜査をするオペレーターに大変身していました。まぁ、時代の流れとともに、女性メンバーのキャラの変更はせざるをえなかったでしょうね。サー坊のマスコット的キャラも愛嬌があって好きだったんですが…。

 ついでにゲストにも触れときます。斉藤美智役の寉岡萌希(つるおかもえき)さんは、お姉さんの寉岡瑞希(つるおかみずき)さんとともに子役時代からドラマやCMに出演されています。お姉さんの方は、OVAウルトラマンネオスウルトラマンメビウスなどで見て知っていたのですが、萌希さんについては、顔に見覚えがあるのに出演リストを見ても記憶のある番組・CMがないということでしばらく悩んでしまいました。どこで見たことがあるんだろう…で、つい先週末、やっと分かったんです。BUMP OF CHIKENのクリップ『車輪の唄』に出演していたんですよ。胸のつかえが降りました。

 2004年9月にBSフジで『怪奇事件特捜チームS・R・I 嗤う火だるま男』という怪奇大作戦の続編が放映されています。実は再放送でも見逃しているため、番組の一部しか見たことがないのですが、組織としてのS.R.I.は残っているものの登場人物はそっくり30年経った現代という設定だったように思います。つまり、牧史郎は登場しないので、セカンドファイルとはちょっと趣が違いますね。ちなみに牧史郎に相当する郷田健の役は、沢村一樹さんが演じていました。

●監督:清水崇 ●脚本:中野貴雄