一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

首都消失

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

首都消失《デジタル・リマスター》 [DVD]

 (1987日本)

 突如首都圏を襲った謎の雲によって、通信を始め、あらゆる都市基盤が停止、雲は外部との物理的な出入りも遮断し、首都圏は完全に消失状態に陥ります。そして日本は一時的な無政府状態となり、米ソの艦隊が日本の沿岸で対峙する緊張状態に突入しました。大阪のテレビ局のキャスターの小出まり子(名取裕子さん)が、ディレクターの田宮洋介(山下真司さん)とともに現場を取材する中、謎の雲の作る障壁を壊し、日本の機能を、そして愛する家族を取り返すため、ひとりの電気技師・朝倉達也(渡瀬恒彦さん)が立ち上がりますが…。


 てな感じのあらすじでイイんですかねぇ…。

 今さらながら、80年代は平和だったよなぁ、と思います。

 米ソの艦隊が出撃して日本の様子を伺い、国連の安全保障理事会が日本を国連の戦略的信託統治下におく検討を始める---まるで戦争が起こって日本が有事に陥ったような状況です。外務省の役人(竜雷太さん)や、全国知事会議、民主党(当時は架空の政党だったはず)前幹事長の中田(丹波哲郎さん)らが、その辺りのストーリーを盛り上げようとしつつ、なぜか浮ついて見えるのは、気のせい?---と思ったが、結局、その辺りの描写は尻すぼみに立ち消え、消化不良気味に。日本の無政府ぶりも案外平穏で、せいぜい代理首都になった大阪あたりでゲリラがちょっとした事件を起こしたくらい。なんなんだ…。

 まぁ、いろんな要素を前半に小出しに詰め込んで見せて、緊張感はそこそこあるんだけど…。緊張に耐え切れなかったかのように、お祭り騒ぎの野外でロックを奏でるギタリストを殴り倒す田宮。スクール・ウォーズかよ。で、そのギタリストが盲目で、実は雲の中にいる友人のために、ギターを奏でていたという与太を支援者の若者が語る中、ギタリストは“Lonely Cry”とかゆー歌をせつせつと唄い始め、その歌声があまりに浮いてて、一気に見ているこっちのテンションがダダ下がりになってしまうとゆーせつなさ。あぁ…。さよならジュピターでも思ったけど、緊張感のある劇中で、歌を唄うためのキャラを登場させんなよ。

 なんとか気をとり直しつつ、後半を見るが、さらに消化不良を起こす出来事が頻発。ストーリーの流れから、まり子、朝倉、田宮の間に微妙な三角関係が生まれつつあったはずなのに、いつのまにか、ストーリー上どうでもよくなってしまってます。雲の障壁に穴を開ける効果を期待された超電導磁力システムを開発した朝倉は、システムを積載したトラックでのミッション中に、トラックごと弾き飛ばされ、負傷してしまうと、この時点で、朝倉=渡瀬さんは、なぜかそこまで張っていた主役の座から降りてしまうという展開。で、田宮=山下さんのキャラ。どーせなら最後まで悪ぶってて欲しかったのに、なんで? どうして? 再び“Lonely Cry”を唄う男の姿が挿入され、田宮がまり子と熱いキスを交わす…もうため息と失笑しか出ないよォ…台風の中、狂ったように例のトラックで雲の中に突進する田宮。やっぱ、スクール・ウォーズだな。どーして、最後の最後に田宮がヒーローにのし上がってしまうんだ?---だって、スクール・ウォーズのテーマ曲は“ヒーロー”だもん(爆)。あぁ…すっかり脱力。

 さよならジュピターみたいに、主役が全滅するのもどうかとは思うが、こんな終わり方もどうかと思うぞ。

 結局、見せ場は中盤に米軍偵察機が雲の中を決死の飛行を続けるシーンだけ。このシーンは、CGなし特撮としての面目躍如といったところで、手に汗握る、緊張感がありましたよ。あとは、大風呂敷広げかけたけど、風圧で3分の1くらいにしか広がらなかったから、せこせこと畳んでしまいました、みたいなやるせなさが…。

 あ、音楽がよかった。モーリス・ジャールって、よく知らないんだけど、ボクが見たことある映画では“グランプリ”で音楽監督してるみたいです。

●監督:舛田利雄 ●特撮監督:中野昭慶 ●原作:小松左京(小説「首都消失」)