一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

吸血蛾

私的評価★★★★★★★☆☆☆

吸血蛾 [DVD]

 (1956日本)

 浅茅会のファッション・ショーの最中に、会を主催するデザイナーでモデルの浅茅文代(久慈あさみさん)宛てに、小さな箱が届けられた。届けたのはつばの広い帽子にサングラス、鼻から下をマフラーで覆い隠した謎の男で、箱を受け取った村越徹(有島一郎さん)が名前を尋ねると、男はマフラーをずらし、大きく裂けた口元から狼のような鋭い牙を覗かせ、立ち去った。箱を開けた文代は、中身を手にした瞬間、昏倒してしまった。それは鋭い牙の歯形がついた、一個の林檎であった。やがて、モデルのひとりが何者かに拉致され、無残な死体となって見つかった。死体の胸には、何故か一匹の大きな蛾の死がいがとまっており、警察はファッション・ショーの常連客で昆虫館の主人・江藤俊作(東野英治郎さん)を訪ねたが…。


 これもモノクロ映画です。

 モダンなコート姿の池部良さん演じる金田一耕助が登場します。この金田一も、かなり原作とは趣が異なります。カッコ良すぎるかな?

 「幽霊男」に比べると、ストーリーは、かなり難解でした。顔の分からない「狼男」という存在に隠れる人物がいったい誰なのか…どう見ても複数存在するとしか思えない展開に、かえって戸惑いを覚えます。「いったい何人の狼男が入れ替わるのか?」なんて思っていると、コントみたいに同じ舞台に次から次へと同じ出で立ちの狼男が登場したりして、ぼんやり見ていたら、完全に置いていかれます。まぁ、捻りすぎという気もしないではない登場人物の相関関係が、探偵の解決編で一気に語られるシーンは少々強引な感じもしますし、「そんな面倒な話だったのかぁ」と呆れるところでもあります。

 この映画もまぁ、何となく江戸川乱歩の少年探偵団を彷彿とさせますが、おそらく「狼男」という顔の分からない人物の存在が、怪人二十面相と重なって見えるからでしょう。あ、でも怪人二十面相は、殺人だけはしないという設定だったっけ?

 えっと、最初に殺されるモデル・滝田加代子の役を塩沢登代路さんという方が演じられています。「幽霊男」にも出演なさっていますが、塩沢ときさんの本名での出演ですね。清楚でキリッとした美人で、脇役ながらけっこう目立つ顔立ちでした(見る角度によっては、フジテレビの佐々木恭子アナウンサーにも似ています)。個人的には、千秋実さん演じる新聞記者の恋人・杉野弓子役の安西郷子さんのハーフ顔が気になりましたが、調べてみると三橋達也さんの奥様でいらっしゃいました。ジャケット右上のショートカットの女性です。

●監督:中川信夫 ●原作:横溝正史(小説「吸血蛾」)