一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

幽霊男

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

幽霊男 [DVD]

 (1954日本)

 吸血画家・津村一彦(山本廉さん)が加納精神病院から脱走したという記事が新聞に出た日、銀座のヌードモデル仲介クラブに加納博士(岡譲司さん)の紹介状を持った佐川幽霊男と名のる男が、モデルの派遣を頼みに来た。幽霊男に選ばれた恵子(川合玉江さん)は、モデル仲間が引き止めるのも聞かず、指定された西荻窪のアトリエに出かけた。しかし、いつまで経っても恵子は帰って来ない。そこで、居合せた猟奇クラブという好事家の面々が、幽霊男のアトリエを訪ねてみると、そこは長年空き家になっていた洋館で、恵子は浴槽の中で殺されていたのだった…。


 モノクロ映画もイイですねぇ。東宝さんのセットが味わい深く映ります。

 金田一耕助モノですが、背広を着て犯人に向けてピストルをぶっ放す河津清三郎さんの金田一は、かなり原作とは趣が異なります。正直なところ、アメリカのハードボイルドな探偵です。そういう意味では名無しの探偵でも良かったんじゃないか、そんな位置づけの金田一探偵ですねぇ。

 この映画では、探偵にはあまり魅力が感じられません。どちらかと言うと、当時の風俗を反映させた、いわゆるカストリ雑誌に好んで掲載されたエロ・グロ趣味な猟奇事件、その怪しい雰囲気が映画全体を支配している感じで、まぁ、その辺は京極夏彦さんの京極堂シリーズの世界と似ていると言えるかも知れません。いや、雰囲気だけ…。

 まぁ、少年時代にジュブナイルに書き直された江戸川乱歩の探偵小説なんかが好きだった方には、多少受けるかなぁ、といったところでしょうか? 個人的には怪しい雰囲気を醸し出す前半の演出は好みです。探偵が銃をぶっ放す荒っぽい解決編は…ちょっと、ね。

●監督:小田基義 ●原作:横溝正史(小説「幽霊男」)