一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

多羅尾伴内

私的評価★★★★★★★☆☆☆

多羅尾伴内 [DVD]

 (1978日本)

 超満員のプロ野球日本シリーズの試合中、逆転満塁サヨナラホームランを打った日報レッズの高塚が、一塁ベース前で突如倒れ、死んでしまった。検死の結果、高塚はアイヌの熊狩りに使われる猛毒を塗った針を打たれて死んだことが分かるが、翌朝、容疑者と目されていた新聞社のカメラマン・川瀬が同じ手口で自殺しているのが見つかり、事件は一気に解決かと思われた。ところが、川瀬の妹ゆう子(竹井みどりさん)が探偵・多羅尾伴内小林旭さん)の元を訪れ、兄の死の真相究明を依頼、同じころ信愛医大理事長の木俣(池部良さん)あてに、高塚を殺害した犯人からの脅迫状が届き、彼もまた伴内の元を訪ねるのだった。


 片岡千恵蔵さん主演で、大映東映でシリーズ化された「七つの顔の男」シリーズのリメイクです。「あるときは片目の運転手、またあるときは…しかしてその実体は、正義と真実の使徒、○○だ!」と見得を切って、変装を解くという手法は、黄門さまの印籠にも似ております(笑)が、ボクら以下の世代だと、キューティ・ハニーのセリフに似ていると思うのでしょうか? もちろん、こちらが本家です。

 時代ですかねぇ…殺害シーンが残酷で、今ならPG12くらいかなぁ? このあとどうなるか分かって、もうそれ以上見せないで、というギリギリのラインが、現代の製作側の線引きと、ちょっと違うんでしょうねぇ。以前CSで見た、少年キング(懐かしい!)連載の「ワイルド7」実写版のテレビシリーズでも、子どものころ毎週見てたはずなんだけど、今見ると、かなり残虐なシーンが多いんですよ。同じ70年代、やっぱり、時代なんだろうなぁ…。

 時代なんだろうなぁ、と言えば。この時代の映画、本編とは直接関係のない歌謡曲・歌手とのタイアップがよくあるみたいです。オープニングでクレジットされるキャストの二番目が「八代亜紀」さん。何で? 本人役で登場、ナイトクラブで歌う歌手、歌い終わった後旭さん扮する「手品好きのキザな紳士」たちの待つ席に挨拶に訪れ、余興に一役買う、というただそれだけ。三番目の被害者が人気歌手という設定で、リサイタルの前座で当時のアイドル歌手「キャッツアイ」という二人組みがステージで歌っている。ボクも知らないけど、たぶん、実在のアイドル・ユニットで、そのあとはまだ大人しい歌を唄ってたころのアンルイスさんが引き受け、殺人事件を目撃。翌朝の朝刊の見出しに「キャッツアイとアンルイスが目撃証言」みたいに登場。別に無くてもいいような、芸能人の本人役だけど、売り出しの手段のひとつなんだろうなぁ。時代だよなぁ…。

 肝心のストーリー。まぁ、面白かったかな? 仮面で顔を隠した犯人像は、当然仮面の下で、いろんな犯人が入れ替わっていることを想定させるものだけど、同時に複数出てくる場面など、「おっ、この仮面の下は、ダレだ?」という驚きをもたらしてくれて、なかなか脚本がよかった。ただ、旭さんの変装が毎度毎度、唐突に現れるので、もうただ単に事件をかき回しているだけなんじゃないか、としか思えない展開もしばしば。片岡さんのシリーズは見たことないけれど、この辺のかき乱し方は元のシリーズでも同様だったらしく、なんか、毒を持って毒を制す、みたいな力技を感じます。それが魅力のひとつなのかも知れませんが、ちょっとまだ馴染めませんでした。

 最後に、旭さんが銃をぶっ放す展開は、やはり、昭和日本のヒーロー像なんでしょうねぇ。ま、そんなヒーローに触れるにはいいかも。

●監督:鈴木則文 ●原作:比佐芳武