一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

晴れ、ときどき殺人

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

晴れ、ときどき殺人 [DVD]

 (1984日本)

 コールガール殺人事件を目撃した北里産業会長・浪子(浅香光代さん)は、何者かに電話で脅迫され、殺人事件の容疑者として取調べを受けていた男を犯人に間違いないと証言するよう強要された。アメリカ留学中の娘・加奈子(渡辺典子さん)の命を狙うという脅しに屈し、浪子は偽証するが、直後に容疑者の男性が、浪子の目の前で飛び降り自殺をしてしまう。1年後、元々心臓の悪かった浪子は、帰国した加奈子の前で無実の男を死に追いやった自分を責め、真犯人が身近にいることを告げかけたまま、絶命してしまう。その翌朝、ふたりの刑事がやってきて、1週間前にホテトル嬢が殺された事件の容疑者・上村裕三(太川陽介さん)が、北里家の周辺で目撃されたこと、そしてその殺人の手口が、1年前のコールガール殺人事件と同様だったことを告げた。刑事が帰ったあと、落としたコンタクトを探すうち、加奈子は部屋に侵入していた上村と鉢合わせをする。信じていた身の周りの人間を誰も信じられなくなっていた加奈子は、上村を浪子の隠し部屋に匿い、真犯人をつきとめようとするが…。


 渡辺典子さんの、当時出演の角川映画の中では、最高傑作という評判を読んだことがあるのですが、ちょっと「?」でした。
 サスペンスの高め方は、けっこううまいなぁとは思ったんですけどね。
 なんか、セリフが変なところがけっこう目立つんですよねぇ…合わせて、「なんでそういう行動になるの?」という唐突な展開だとか継ぎ接ぎのような展開だとかが、ぞろぞろ現れてきて、ちょっと見ていて神経ざわつく感じがあるんですよねぇ。見ていて状況把握ができないまま、ストーリーが流れていく場面がしばしば。変なセリフ回し以外に、畳み掛けるようなセリフの応酬が、早口すぎて聞き取りづらいのも状況把握を困難にしている要因のひとつにあると思います。と、言いつつ、肝心な骨格の辻褄はちゃっかり合わせて来るので、まったく話が分からないワケでもないから、なんか、ナメられているような気がしてくるんですよ。やっぱり流してしまった場面のセリフの内容だとか、状況把握し損なった部分とかが、あとでどうしても気になって、結局もう一度見直してみようかなぁ、ということになるのですが、やはりそういう動機で2回目を見させられるのは、ちょっとだけ腹立たしくもあるのです。

 時代が変わると分からなくなる、その当時だけ笑えるネタも多いですねぇ。「なるほど・ザ・ワールド」とか「オールナイトなんとか(フジだろうね)」とか、「見栄講座」とか、正直、(当時の)大学生のコンパ芸見ているようなセリフが多すぎます。なんか、素人っぽいです。
 それと、事件の性格上もあるけれど、女性のヌードが頻繁に出てきて、正直邪魔臭いです。おまけに、下世話なセリフ回しやエピソードがかなり多く、やけに挑発的な気がします。まぁ、あの自称「巨匠」の若いころの作品ですからねぇ…。

 1回目は犯人探しでドキドキできますが、2回目はディテールの確認作業、3回目でやっと映画の雰囲気が分かるのかなぁ?
 結末は…ミステリとしては…やっぱり赤川次郎さんの作品だからなのか、シナリオが悪いのか、ちょっと不誠実な印象がありますね。いろいろサスペンスを高めた割には、伏線が無さ過ぎかも知れませんね。その高めたサスペンス自体がミスディレクションを狙ってのものかも知れませんが、やはり、「いつか誰かが殺される」と同様に、「それでいいのか?」感は否めません。

 あ、とりあえず、渡辺典子さんはキレイに映ってました。アイドル映画としては納得の作品です。角川のレオタード好きは、まったく嗜好に合わないけどね。

●監督:井筒和幸 ●原作:赤川次郎(小説「晴れ、ときどき殺人」)