一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

麒麟の翼~劇場版・新参者~

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

麒麟の翼~劇場版・新参者~ Blu-ray通常版

 (2012日本)

 東京・日本橋、翼のある麒麟の像の下で男性の刺殺体が発見された。刑事・加賀恭一郎(阿部寛さん)は、被害者・青柳武明(中井貴一さん)の死の直前の行動に疑問を抱く。なぜ彼は腹部を刺されたまま助けも求めず、8分間も歩き続けたのか? そもそも縁もゆかりもない日本橋で何をしていたのか?
 容疑者は八島冬樹(三浦貴大さん)・無職。八島は青柳のバッグを持って現場から逃走中に、車に轢かれて意識不明になっていた。恋人の中原香織(新垣結衣さん)は彼の無実を訴えるが、警察本部は、生活に困窮する八島が金品欲しさから犯行に及んだものとして裏付け捜査を開始した。一方、独自に捜査を進めていた加賀刑事は、推理の限界にぶつかっていた。被害者はなぜ殺されたのか。そして命が終わるその時に、誰に何を伝えようとしたのか。事件に関わるのは日常を生きる普通の人々。すれ違う心が起こした[哀しき殺人事件]……加賀恭一郎は、その背後に隠された真実を見つけだすことができるのか?
Blu-rayパッケージ「STORY」から引用)


 TVの〝新参者〟シリーズがなかなか秀逸だったので買ってたBlu-rayでしたが、今ごろになってやっと見たワケです。

 微妙でした。
 TVシリーズのような、「人は嘘をつく、そして嘘を糊塗するためさらに嘘を重ねる」という前提に立ち、ちょっとしたことが気になってしまう加賀刑事の些細な気づきから真実が分かる過程に、「それは、そういう意味だったのかぁ」というような納得感、カタルシスが、味わえなかったですね。事件の全容が分かっても、なんかこうスッキリしないのでした。

 登場人物の気持ちだとか行動だとか、一応「そんな風に考えたり、そんなことをしてしまうこともあるんだろうなぁ」みたいに受け入れることはできるんですが、なんかこう、どこ中心に観たらいいのか、本筋がよく分からない演出のように感じました。なぜなんでしょう? 真犯人が意外な人物だったから? いや、そもそもこのストーリーに真犯人が誰か、は重要ではなく、青柳親子と加賀親子の二組の心がすれ違う親子にドラマの焦点が当たっているというのが正しい見方なのかも知れません。で、たぶん、そこが、特にこの映画しか観てない人にとっては、納得いかない筋になってしまってるような気がします。いえ、あくまで個人的な感覚です。

 中井貴一さんと松坂桃李さんの親子が、ちょっと重すぎるかなぁと思いました。お二人とも、すごく上手いし、すごく良かったんですけど、なんか映画全体で見ると、演技が重厚過ぎて浮いてしまってるようにも感じてしまいました。ある意味、もったいない使われ方だったのでしょうか? あと、そもそも松坂さんの高校生役(中学時代の回想シーンは言わずもがな)は無理です。せいぜい20歳過ぎの浪人生にしか見えない。
 
 最後まで見て、泣けますか?
 ほぼ、泣けるシーンはなかったですねぇ。
 しいて言えば、新垣さん演じる香織の役どころは、少し泣けました。
 青柳武明の死の真相を描くシーンでの中井さんの迫真の演技にもかかわらず、加賀が代弁する〝青柳父が息子に最後に伝えたかったこと〟を聞いてさっぱり泣ける要素がなかったのは、なんとも……。


●監督:土井裕泰 ●脚本:櫻井武晴 ●原作:東野圭吾(小説「麒麟の翼」/講談社刊)