一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

カルテット!〜Quartet!〜

私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆

カルテット!~Quartet!~ [DVD]

 (2011日本)

 崩壊寸前の家族を、バイオリンに打ち込む中学生の長男が、家族4人でのクラシック音楽の演奏(カルテット)を実現させることで再生しようと奮闘する物語。千葉県浦安市に住む永江家は、リストラされて失業中の父、直樹(細川茂樹さん:ピアノ)、失業した夫に代わって慣れない魚河岸でパート勤務をする母、ひろみ(鶴田真由さん:チェロ)、失業して家事をするようになった父親に反抗的な女子高生の長女、美咲(剛力彩芽さん:フルート)、そしてバイオリニストとして将来を有望視される長男の開(高杉真宙さん:バイオリン)の4人暮らし。父の失業を機に夫婦仲はギクシャクし、弟の開に実力で追い越されてフルート奏者を断念した美咲も、両親との関係がこじれて半ば不良のような高校生活を送っていた。ある日、ピアノでパッヘルベルのカノンを弾く父、直樹の姿を目にした開は、祖母、柳川陽子(由紀さおりさん)の誕生日に、かつてお祝いの演奏会をしたときの家族の写真を指して、そのとき幼くてバイオリンを弾いていなかった自分も含めた家族4人(カルテット)で、祖母のお祝い演奏会をしようと提案する。


 浦安市市制30周年記念映画だそうです。
 ところが、撮影を開始する直前の2011年3月11日、東日本大震災が発生し、浦安市液状化現象に見舞われ、ライフラインや住宅の損壊が起こるなど、激しく被災します。復興のため、全市を挙げての応急復旧措置が進む中、本作は被災からわずか18日後の3月29日にクランクインしました。東日本大震災の発生により、人と人との繋がり=『絆』の大切さが大きくクローズアップされ、本作も『家族の絆』をテーマに、崩壊しかけた家族の絆を再生するストーリーを描きながら、災害から復興する人たちを応援する内容の映画となっています。

 実は、初見から数年経って見直しました。
 初見のおりは、特に剛力彩芽さんが苦手で、なんだか正当な評価ができなかったように思うのですが、今見直すと、音楽の演奏を通じて家族の絆を取り戻す過程は、まずまず評価できました。ただ、やはり剛力さんは、生理的に苦手なタイプであることは変わりなく、おまけに役どころも苦手なタイプであるため、好きな映画とはなりませんでした。
 また、当初は直樹へのわだかまりから、演奏に加わるのを拒んでいたひろみと美咲が、それぞれ先輩から薦められて翻意するあたりの描写がなんだか安直というのか、演出に丁寧さを感じなかったので、なんだか時間合わせのためのご都合主義を持ち出されたみたいな気がして、ちょっと残念に思いました。主役の高杉真宙さんの熟れていない演技もあいまって、ストーリー自体は悪くないのに、微妙な印象…泣けそうで泣けませんでした。

 それにしても、こんな全編クラシック音楽三昧な映画で、エンドクレジット前にヒップホップ調の曲を挟む必要があったのでしょうかね?

●監督:三村順一 ●原作:鬼塚忠(『カルテット!』/河出書房新社刊) ●音楽:渡辺俊幸