一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

カーテンコール

私的評価★★★★★★★★★☆

カーテンコール [DVD]

 (2005日本)

 昭和30年代から40年代の半ばにかけて、映画の上映の幕間に形態模写をしたり、ギターを弾いて歌を歌ったりして客を楽しませる芸人さんがいました。東京から福岡のタウン誌に移籍してきた香織(伊藤歩さん)は、一通のハガキから下関の映画館『みなと劇場』へ取材に出かけ、そこでかつて働いていた幕間芸人・安川修平(藤井隆さん)とその家族のことを探し始めます。ところが、やっと見つけた安川の娘・美里(鶴田真由さん)は、『子どものころに自分を捨てた父には会いたくない』と頑なに言い張るのでした。香織は安川と美里のことを取材するうち、疎遠になっていた父・達也(夏八木勲さん)と自分との関係を見つめ直すきっかけを得て、美里に安川を会わせることを決意しますが…。


 劇場の扉を開けると、ノスタルジックなモノトーンの回想シーン…かつて父や母に連れられて映画館に通い、映画がこの上なく楽しいエンターテインメントだった少年少女にとっては、涙がでるほど懐かしい雰囲気が見る者を優しく包み込んでくれます。座頭市、寅さん、高倉健さんに吉永小百合さん、少年時代に少し背伸びをしながら見た懐かしい映画。邦画が好きでヨカッタ…なんて思える瞬間。

 香織と達也、そして美里と修平という二組の父と娘が再会し、絆を取り戻す物語。そして、東京で仕事に失敗した香織が、新しい仕事を通して、社会人としても人間的にも再生し、成長していく物語。人の心の温かさが画面のあちらこちらから滲み出ていて、優しい気持ちになれる映画です。

 別れ別れになった父と娘の話なんて、陳腐だよなぁ…なんて少し斜に構えて見てたりしたんですが、最後にふたりが再会するシーンは、最高の出来だったと思います。舞台的にはますます陳腐な感じがしたんですが、とにかく父・修平(井上堯之さん)と娘・美里のふたりの表情・なんとも言えないとびきりの笑顔・泣き笑い顔、人は本当にうれしいとき、こんなに豊かな表情をするのだと、見ていてほとほと感心・感激しました。この再会シーンだけでも、十分にお金を払って見るだけの価値があると思いました。

●監督・脚本:佐々部清