一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

GOTH[ゴス]

私的評価★★★★★★★★★★

GOTH[ゴス] デラックス版 [DVD]

 (2008日本)

 高校生の神山樹(本郷奏多さん)は、学校や家族の前では優等生の顔を見せながら、人の心の暗黒面に強く惹かれ、猟奇的な死体などに特別の興味を示す“GOTH”と呼ばれる特殊な趣味の持ち主であった。樹のクラスメイトの森野夜(高梨臨さん)は、過去のある事件をきっかけに不眠に悩まされ、周囲に溶け込まず孤立していたが、そんな樹の裏の顔を見抜き、彼にだけは心を許すようになっていく。そのころ、ふたりの住む町では、左の手首を失った若い女性の死体が立て続けに発見され、連続リストカット殺人事件として世間を騒がせていた。やがてふたりは、この猟奇的な事件に心を奪われてゆき、興味と好奇心の赴くままに事件を追いかけるが…。


 人気作家の乙一さんの同名小説の映画化。
 原作は読んでいませんが、原作を元にしたオリジナル・ストーリーなのだそうです。
 自然が豊かで、人が大勢住んでいながら、どこか人と人とのつながりが微妙なニュータウンの雰囲気が、猟奇殺人の起こる舞台としてうまく雰囲気を出しています。
 のっけから手首のない女性の死体が、ニュータウンの流れる水のある公園で見つかり、動悸が高鳴ります。警察やマスコミ、野次馬のたかる死体発見現場を注視するふたりの高校生、神山樹と森野夜。個人的には気怠そうな感じの表情が好きじゃない本郷奏多さんですが、本作の神山樹は見事に役にはまってました。また、高梨臨さんも、暗い過去を引きずる美少女役を見事に演じています。ふたりのやりとりは、静かに進行していくのに、全般的に背筋がぞわぞわするような、危なっかしい、スリリングな感じがあり、本作の雰囲気をうまく引き出していると思いました。

 また、“GOTH”と呼ばれる趣味を持つふたりが、猟奇的殺人事件に触発されて共鳴し合うさまを、瑞々しく美しい映像で、丁寧に描いていると思いました。画の切り取り方、ピントの合わせ方、カメラのパンの仕方、光の当て方、飛ばし方、スローの入れ方、ノイズのかけ方、鏡を使った表情の抜き方などなど、どこを見ても、かなり映像にこだわりを感じます。現実世界のシーンと、主人公ふたりの登場するシーンの画面の質感の違いもステキです。そして、何より、リリカルで、耽美的で、蠱惑的な映像なのです。
 そして、映画の雰囲気を盛り上げる美術さんの仕事も実に素晴らしい。
 映像に合わせたBGMや効果音も、雰囲気たっぷりで、うまく使っています。


 全般的に重苦しい雰囲気があります。
 しかし、ストーリーの落とし方が、素晴らしかったです。
 感動しました。静かに泣けます。


●監督:高橋玄 ●原作:乙一(小説「GOTH」/角川書店刊)