一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

劇場版 夏目友人帳 〜うつせみに結ぶ〜

私的評価★★★★★★★★★☆

劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~(通常版) [Blu-ray]

 (2018日本)

 人と妖の間で忙しい毎日を送る夏目(声:神谷浩史さん)は、偶然昔の同級生・結城(声:村瀬歩さん)と再会したことで、妖にまつわる苦い記憶を思い出す。
 そんな頃、夏目は、名前を返した妖の記憶に出てきた女性・津村容莉枝(声:島本須美さん)と知り合う。
 レイコ(声:小林沙苗さん)のことを知る彼女は、いまは一人息子の椋雄(声:高良健吾さん)とともに穏やかに暮らしていた。
 彼らとの交流に心が和む夏目。
 だが、親子の住む町には謎の妖が潜んでいるらしかった。
 そのことを調べに行った帰り、ニャンコ先生(声:井上和彦さん)の体についてきた"妖の種"が、藤原家の庭先で、一夜のうちに木となって実をつける。
 どことなく自分に似た形のその実を食べてしまったニャンコ先生が、なんと3つに分裂してしまう――!?
(『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』公式サイト「あらすじ」より引用)

natsume-movie.com


 里山みたいな、ちょっと都市から離れた郊外の町というのが、〝妖〟の存在を許容するステキな舞台装置ですね。
 こういう田舎町が舞台のお話の方が、心地よく感じられて、落ち着いて観ることができます。
 キャラデザインもいいカンジに落ち着いてて、安心です。
 ということで、ボサッと、ゆるっと、見るともなしに見始めたんですが、教室でのうたた寝中に見た夢から、いきなりグイグイ引き込まれてしまい、そのまま本気モードで一気に鑑賞してしまいました。
 〝妖〟のデザインも古典的な妖怪をモチーフにしているカンジで、ますます気に入りました。

 映画のためのオリジナル・ストーリーなのかな?
 適度に謎を散りばめて、適度に登場人物を引っかき回して、気がついたら、もうその先の結末が読めるのにもかかわらず、心に立ち始めたさざ波が、次第に怒涛のように心を震わせ、予測した感動的なフィナーレへと昇華していってしまう。巧みに伏線をばら撒いて、しっかり分かりやすく回収するシナリオの妙、実にすばらしい仕事です。

 夏目が友人帳から〝妖〟に名前を返す儀式も、なぜだか胸が高まって涙腺がほころびます。
 名前が書かれた当時の、祖母の記憶が蘇るんですね。
 全然そんなつもりもないのに、気づいたら、はらはらと涙がほほを伝うというステキな演出、すばらしいです。
 

 なんか、基本的にアニメは見ないけど、って枕詞、そろそろ返上ですね。
 今年はずいぶんと、アニメ映画、観てます。
 で、そのたびに、感動を更新していってて、日本のアニメのメンタリティ、すばらしいな、と。見直しましたね。
 この作品も、なんかそんなに大そうなお話でもないんだけど、さりげない優しさが全編からじわっとあふれてて、めちゃくちゃ魂を揺さぶられてしまいました。
 シナリオ、演出、作画、アニメーション、音楽、声優さん、...etc.全部ひっくるめて、トータルですばらしい作品です。


村井さだゆきさん脚本の作品です。
vgaia.hatenadiary.org


●総監督:大森貴弘 ●監督:伊藤秀樹 ●脚本:村井さだゆき ●原作:緑川ゆき(コミック『夏目友人帳』シリーズ/花とゆめコミックス白泉社刊) ●アニメーション制作:朱夏