シャレード(Charade)
私的評価★★★★★★★★★★
(1963イギリス)
パリの名所を舞台に、美しき未亡人が25万ドルの陰謀に巻き込まれるスリリングな〈謎解きゲーム(シャレード)〉
夫との離婚を決意したレジーナ(オードリー・ヘプバーンさん)は、スイスのスキー場でダンディな紳士ピーター(ケーリー・グラントさん)と出会う。ところが、パリへ戻った彼女を待っていたのは、夫の不可解な死。葬儀会場には見知らぬ3人の男が現れ、米大使館では財務官バーソロミュー(ウォルター・マッソーさん)から、戦時中に夫が仲間と共謀して軍資金25万ドルを隠匿したことを聞かされる。消えた25万ドルを巡り、五里霧中のレジーナはピーターに助けを求めるが、事件の背後にピーターの影を感じる……。
(Blu-rayパッケージのSTORYから引用)
昼間にNHK-BSプレミアムで放映していたのを観ていたのですが、途中で年始の挨拶の訪問を受けたため、中抜けしたまま観終えてしまっていたので、夜になって改めてブルーレイ版で鑑賞し直しました。DVD版で鑑賞して以来、10数年ぶりの鑑賞ですが、やはり不朽の名作のひとつですね。
昼間は漠然と見てたんですが、ブルーレイ版とは日本語字幕の表現がけっこう違ってましたね。場面によっては、互いに取り替えた方が分かりやすかったかな、というようなシーンもありましたが、こういうところを比べるのも面白いかもしれません。
オープニングクレジットでヘンリー・マンシーニさんの妖しくもメロディアスなテーマ曲に乗って、3色の矢印のアニメーションがぐるぐると絡む映像が映し出されますが、この色分けには本作の主題となる〝サスペンス〟〝コメディ〟〝ロマンス〟という3要素を示す意味合いがあるのだそうです。
実際は、スリルとサスペンスにあふれたドラマに、オードリー・ヘプバーンさんの大人可愛い魅力が詰まったロマンスが、ユーモアとウィットに彩られて仕込まれた感じで、どちらかと言えば、圧倒的にサスペンス色の強い映画なんだと思います。
ストーリーは、最後にレジーナが『誰を信じれば……』と絶句してしまうように、登場する人物たちの誰もが信じるに値しない曲者ぞろいであることが、互いのさまざまな情報のリークによって提示され、レジーナも、観ているボクたちも、混乱し、だまされます。
まさに〝シャレード(見せかけのウソ)〟にだまされるな!と言ったカンジで、このへんは、ユーモアを交えながらパリの名所でデートしたりコミカルな追跡劇を演じたりしながらも、先に進むに連れて次第にサスペンス度を高めていき、しかも最後の最後まで、アッと驚かされる仕掛けを仕込んだ脚本の構成の妙が、実に素晴らしいと感じました。
また、ピーターとレジーナの危険な匂いのするロマンスのくだりの演出が、とてもロマンティックです。
感情を示唆する説明的でつまらないセリフが一切排除されていて、特にヘプバーンさんの一挙一動に、目まぐるしくコロコロ変わる表情、そしてわずかな言葉数だけで、レジーナのピーターに対する恋心が次第に高まるのが伝わってきて、観ていて胸がキュンとなってきます。
ヘンリー・マンシーニさんの音楽が、とても効果的にスリル、サスペンス、ロマンスを盛り上げる効果を発揮しています。
特にアメックスのビルの屋上の争いの場面など、アクションに合わせて音楽がストップ&ゴーを繰り返すところは、この時代の映画らしい演出で、素晴らしいと思います。
それから、この映画の最高に素晴らしいところは、カメラワークだと思うんです。
アップや引き、俯瞰や仰望を巧みに使い分けるカット割を駆使して、音楽とともにサスペンス度を次第に高めていく映像を提供してくれていて、たとえネタばれしたあとでも、何度も観たくなるのはこのカメラワークの素晴らしさ故だと思っています。
う~ん。脚本、音楽、撮影、演出、演技……やっぱり、トータルで、素晴らしい作品としか言いようがないですね。
この映画みたいに、1960年代前後は、素晴らしい作品がたくさんあるんでしょうね。
今年もたくさんの良作・佳作に出会えるとイイな、と思います。
あ、本作でもボクの好きなジェームズ・コバーンさんが、カッコよかったです。
●監督:Stanley Donen スタンリー・ドーネン ●原作・脚本:Peter Stone ピーター・ストーン ●音楽:Henri Mancini ヘンリー・マンシーニ