一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

嵐電

私的評価★★★★★★★★☆☆

嵐電 [Blu-ray]

 (2019日本)

撮影所の町を走り続ける嵐電から幻想と恋愛の映画が生まれた

 京都市の西に百年以上前から京福電気鉄道嵐山線(通称「嵐電=らんでん」)は走っている。地元の人々や観光客から親しまれるその沿線に、映画創成期より撮影所が数多く造られ、東映京都撮影所と松竹撮影所では今日も映画の撮影が行われている。
 嵐電の街に鎌倉からやって来たノンフィクション作家の平岡衛星(井浦新さん)は、嵐電にまつわる不思議な話の取材を始める。夕子さん電車というラッピング電車を見たカップルは幸せになれるという。青森から修学旅行でやって来た女子学生・北門南天(窪瀬 環さん)は、嵐電を8ミリカメラで撮影する地元の少年・子午線(石田健太さん)に恋をする。太秦撮影所の近くのカフェで働く小倉嘉子(大西礼芳さん)は、撮影所にランチを届けた折、東京から来た俳優・吉田譜雨(金井浩人さん)の京都弁の相手を頼まれ、彼に魅かれていく。まるで夕子さん電車の都市伝説に導かれるように。だが、取材を続ける衛星には、妻・斗麻子(安部聡子さん)との間にかつて起きたある出来事を呼び覚ます目的があった。嵐電の都市伝説はもうひとつ存在したのだ。
 嵐電の街に紛れ込んで、まるで出られなくなったような三組の男女の恋と愛の運命が、互いに共振を起こすように進んで行く。
Blu-rayパッケージから引用)



 制作者のことなど、一切知らずに書きます。
 的外れかもしれませんが、観たまんまの感想なんで、ご勘弁を。


 映画の中の現実世界というプラットフォームに、嵐電の車両を模した虚構の世界が静かに、シームレスに乗り付けて、何事もなかったかのように通り過ぎていく、そんなイメージを思い浮かべました。


 おおかた現実世界の中で、三組のカップルの恋愛模様だったり、夫婦愛だったりが描かれているんだけど……。

 嵐電をめぐる都市伝説のせいで、衛星夫婦に何か事件が起こったようでもあり、嘉子と譜雨の間の始まったばかりの恋が行方不明になったようでもあり、南天と子午線はその都市伝説から逃れようとしているみたいだったり、どこからどこまでが虚構の世界なのか分からないなぁ、なんて思ってたら、沿線に住む実在の人々と振り返る過去の8ミリフィルムの映像の中の嵐電が、ドキュメンタリーなのにドラマの一部として組み込まれていたり、その過去のフィルムの中に、現在の嘉子と譜雨が映っていたり、衛星の妻・斗麻子が、8ミリフィルムなのに衛星に話しかけてきたり、もう、ファンタジーすぎて、酔っ払ってしまいそうです。


 でも、何回も繰り返し観たくなる、そんな雰囲気たっぷりの映画でもあり、繰り返し見ていくうちに、いろいろなことが新たに分かった(つもりになった)り、なんていうか、いろいろな見せ方に挑んで制作した〝実験的な映画〟なのかなぁ、なんて。そんな風にも思えます。


 嘉子役の大西礼芳さんの演技が、真に迫っていて、ステキでした。
 譜雨に食ってかかったときの感情のバクハツが、まるで自分が責められているかのように胸に迫ってきました。
 駅で女性の監督から声をかけられ、譜雨といっしょに自分の映画に出てほしいと言われたときの、目を真っ赤に腫らして涙ぐむ様子も、痛々しいほど感情を揺すぶられて、素晴らしかったと思います。
 他の出演作を調べてみましたが、たくさん出られているのに、ほぼ未鑑賞でしたので、今後ちょっと気にして観ようと思いました。


 すみません。今のところ、うまく感想が書けませんが、とりあえず、こういう映画は好きなので、たぶん繰り返し観ることになると思います。



●監督:鈴木卓爾 ●脚本:浅利 宏、鈴木卓爾 ●音楽:あがた森魚