一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

Daughters

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

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映画『Daughters』公式サイトより引用

 (2020日本)


 4月の中目黒。
 桜が並ぶ目黒川沿いのマンションの1室で暮らす友人同士の堤小春(三吉彩花さん)と清川彩乃(阿部純子さん)。共に27才。
 ふたりは、よく働き、よく遊び、自由を謳歌したルームシェア生活を送っていた。

 そんな生活に、変化が訪れる。
 5月のある休日。共にランチへ出かけたその席にて、小春は彩乃から突然の妊娠告白を受ける。そして、その子供を産む決断をすでに下している彩乃。今の生活を続けながら子供を育てていくのは現実的ではない、と反対する小春。だが、彩乃に着いて行った産婦人科医で、胎児の映像を目の当たりにし、そばで支えていく決意を小春は固める。

 それをきっかけに少しずつ変わっていく彼女たちの生活……。
 過去を振り返りながらも変化を受け入れるふたりの、約10ヶ月の物語。
(映画『Daughters』公式サイト「STORY」より引用)

daughters.tokyo



 タイトルの〝Daughters〟は、何を意味してるんだろうね?

 日本の教育課程で学んだ知識で単純に訳しちゃうと〝娘たち〟ってなっちゃうけど、この場合、ほぼ親子関係の中での娘を指してるワケで、ちょっとこの作品の意味としては弱い気がする。単に〝お嬢さんたち〟なのか? 〝女系子孫〟なのか? どれもピンと来ない。まぁ、ネットや辞書だけでは分からないことも、世の中たっくさんあることは、知っておいていいと思う。

 とりあえず、男性でちゃんとしたセリフがあるのは、彩乃の父親役の鶴見辰吾さんだけという、女性中心の作品だ。



 監督の津田肇さんは、経歴を拝見すると、クリエイティブ・ディレクターというのかな。ファッションや音楽に関するイベントをはじめ、マルチな才能を発揮されている方のよう。確かに、作品全体を通して見て、映像・音楽・構成…etc.…オシャレで、詩的で、アーティスティックな印象だった。

 いきなり、ちょっと暗めのトーンで黄色みが強い色合いの照明で部屋の中が映し出されて、「正直、あんまり好きじゃない色合いの映画だなぁ……」なんて思った。明るい外の映像でも、全体的にトーンを落とし気味で、木陰など緑より黒に塗りつぶされてる感じ。でも、場面ごとに、一応、観客に見せたい色合いがあるようで、画面の変化はある。とは言え、心理的に迫ってくるBGMの使い方とともに、全体的には抑えた色調で、少し悩ましくも重い感じの作品の統一感も感じるところ。

 なんというか……都会暮らしを謳歌する女性たちの生々しい生きざまを描いているのだけれど、どこかしらふわふわと浮世離れしてるというか、この世の出来事とは思えないというか……自分とあまりにも違う世界に生きている人たちの生活に触れて、場違いな居たたまれなさを覚えてしまい、フラットな目で作品を鑑賞できてはいないな、と感じた次第。


 そもそも、生涯独り身の男のボクには、アタマで理解できても、ココロが消化できない気がする映画、って言ったら、逃げてると思われるかな。



 今年の初めごろにルームシェアする女性のお話を観てたな、と思ったんだけど、あちらの作品の主人公たちは20歳、まだ夢を模索してられる時間的猶予がある世代。

 一方、本作の主人公たちは27歳、おそらく、この先の人生を考えると、いろいろと不安を覚える年齢に差し掛かってる世代なのではないだろうか?

 でも、この作品は、あるべき不安が絶妙に押し込められていて、観ていて、なんかこう、もどかしさを覚える。

 いや、でも。現実は、そんなモンなんだろう。

 二者択一的な正解があるばかりが、人生じゃない。

 ボクだって、毎日どっちつかずな態度でふらふらと浮世を漂っているようなモンだ。

 もしかしたら、ボクが覚えたもどかしさは、精神的に不安定なボク自身の人生の投影だからかもしれないじゃないか。



 とは言え、やはり、この作品に登場する人物同士の人間関係が、あまりにも薄っぺらい印象なのは、いかんともしがたい。

 それは、作品の雰囲気を壊さないためなのか? それとも、現に今様の人間関係が、そんなモンだからなのか?

 この作品の中で、唯一、産婦人科医役の大塚寧々さんだけが、共感できる存在だった。産婆に取りあげられたボクの人生に、産婦人科医がクロスしたことは、ただの一度もないのだが……^^;




 なんか、とっ散らかった感想だな。明らかに、動揺しているとしか思えない^^;

 まぁ、こうして、ふだん考えてもいない世界や価値観に触れることも、映画の楽しみの一つだけどね。





 小春の回想シーンの中に時折インサートされる彼女の独白が、詩的で好きだったな。



●監督・脚本:津田 肇