ジョゼと虎と魚たち
私的評価★★★★★★★★★★
(2020日本)
趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ(声:清原果耶さん)。
幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫(声:中川大志さん)に助けられる。
海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。
そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅ(声:松寺千恵美さん)は、あるバイトを持ち掛ける。
それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。
(アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト「STORY」より引用)
joseetora.jp
田辺聖子さんの原作は読んでいないんですが、書評とかを目にして、一応内容は知っているつもりです。
短編集の中の一篇なんですかね?
ちょっと意味深だけど、あっさり目の終わり方だったのかな?
で、同名の作品としては、ずいぶん前(今検索したら13年も前ですなぁ)に観た妻夫木聡さんと池脇千鶴さん主演の実写版『ジョゼと虎と魚たち』を鑑賞しているワケですが、こちらの作品の恋愛模様が実に生々しくって、13年前に観たときに「切なすぎて辛いなぁ」なんて思ったような記憶があります。
そんな前置きがあっての鑑賞なので、内心「ビター・エンドだったらイヤだなぁ」なんて思ったりもしてたんですが、いざ観始めたら、画面の美しさに惹き込まれて、すっかりこの映画の虜になっていました。
とにかく、海中をはじめ、背景画が美しいアニメです。これだけでも癒されます。
その上、作品の展開がとても良かった。たぶん、展開的に恒夫の身に降りかかる出来事にあざとさを覚える向きもあるかとは思いますが、おそらく、ジョゼと恒夫のやり取りの中で起きるすべての出来事が、〝障がい者あるある〟的な、ある意味とても日常的に起こりえることばかりなのだと思います。恒常的に車いす生活を送られている方が、ジョゼの描かれ方をどのように感じたかは分かりませんが、ボクはちゃんと取材した上で描いているんじゃないかな、と想像しました。なので、ボクはストーリー展開に、無理やり感は感じなかったですね。
そして、その展開の中で起きるさまざまな出来事の都度、ジョゼの心の中で激しく騒めく感情の波が、とてもナチュラルな感じ方に思えましたし、ジョゼの反応に対する恒夫の気持ちもとても素直に受け止められたので、ボク自身も二人の気持ちに素直に寄り添うことができました。そのあたり、脚本がしっかりしていたのではないかと思います。
終盤、エンディングに向けて、ジョゼがさまざまな決断をし、思い切った行動を繰り出してくるので、時が進んで画面が切り替わるたびに、どんなエンディングになるのかがすごく気になってしまい、妙にドキドキしながら成り行きを見守っていました。
小説とも、実写版とも違う、心温まるエンディングを迎えるのか? それとも——
歳をとったせいか、恋愛映画も、案外照れずに見ることができるようになった気がします。
そして、この世に生を受けたからには、障がいの有無にかかわらず、恋愛をする自由を謳歌してほしい。そんな思いです。
さり気なく伏線を回収した最後のシーンが、心にジンとしみました。
※妻夫木聡さんと池脇千鶴さん主演の実写版。原作小説より現実的でビターな作品。
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※車椅子に乗った主人公たち。
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●監督:タムラコータロー ●脚本:桑村さや香 ●音楽:Evan Call ●アニメーション制作:ボンズ ●原作:田辺聖子(小説『ジョゼと虎と魚たち』/角川文庫刊)