一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

花束みたいな恋をした

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

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映画『花束みたいな恋をした』公式Twitterより引用
映画『花束みたいな恋をした』公式 (@hana_koi_jp) | Twitter

 (2021日本)
 
東京・明大前駅で終電を逃し偶然に出会った、麦と絹。
バイト、同棲、就活。
いつでも二人で一緒にいた20代のぜんぶが、ずっと楽しかった。
猛スピードで加速する恋の忘れられない〈最高の5年間〉を描く、不滅のラブストーリー誕生。

 東京・京王線明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った山音 麦(やまね むぎ/菅田将暉さん)と八谷 絹(はちや きぬ/有村架純さん)。好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。

(映画『花束みたいな恋をした』公式サイト「STORY」より引用)
hana-koi.jp


 観る者の〝恋愛観〟が試されてる?かも知れない映画。


 いきなり5年後の〝今〟から始まり、出会った頃に戻るパターン。
 恋人たちが〝互いの距離感を確かめ合う〟かのように一つのイヤホンで片方ずつ音楽を聴くの、ボクも純粋に音楽を楽しむという観点から、どうにも気に入らない行為なので(決して恋人たちの仲睦まじい佇まいに嫉妬してでは無いのですよ^^;)、そこのウンチクから物語を始めるのは悪くないと思うの。
 でも。そこから遡って見せてくれた二人の5年間がなぁ……。


 他人の色恋を、どういう意識で観たら、『映画として楽しい』と思えるんだろうね?
 主人公のどちらかのサイドに立って、共感できるかどうか、ということなのかな?
 公式サイトのSTORYの終わりに書いてある『これはきっと、私たちの物語』と言うのが、もうこの映画のすべてと言っても過言でないと思うんですよ。

 ボクは、この中の〝私たち〟に含まれていない──

 麦と絹を〝イマドキの若いカップル〟なんて決めつけるのも癪ですし、きっとそこまでイマドキでもない恋人同士の関係なのかも知れないし、とにもかくにも、ボク自身の人生経験の中に存在し無い価値観の世界が描かれている以上、この映画の二人に対する共感力皆無なボクが、とやかく言うのはまったくのお門違いなのかも知れません。そう思うと、なんか悔しいですねぇ^^;

 ですが、正直な感想を書きます。

 映画の雰囲気は良かったし、二人がサブカル的な趣味嗜好というところには共感しないでもないし、引っ越し先の部屋を造り込んだ美術さんのお仕事もステキだったと思ったし、いろいろイイところもあったんだけどね。
 何というのか……。

 いろいろ、キモチ悪かった──

 何もかも嗜好と思考が似通ってるなんて、実につまらない組み合わせだと思うんだけど、きっとボク自身もそういう人と出会えたら、いきなり心のバリアを外すほどの衝撃を受けるモノなのかな?
 でも、ボクなら相手との〝違い〟が分かった時が恐怖でしかない──その時点で、相手がズンッ!と遠くに移っちゃう気がして怖いの、分かってもらえるかなぁ?──ので、最初は恐る恐る手探りするようにアプローチする気がするんだけど、その場に出くわしたら、勢いが付いちゃって変わるのかなぁ。
 てか、サブカルに傾倒する人ほど、いきなりのめり込みやすいのかしら?

 いずれにしても、スニーカーの選択から手提げ袋のロゴ(JAXAだったね^^)から本棚に並ぶ書籍の収集ジャンルから、何から何まで恐ろしいほどに似通っていたことで、二人の出会いは、まるで神が引き合わせた運命の出会いとでも思ったかしらね。
 フンっ! アホらしい。

 ガァ~ッと一気に燃え盛って、二人の今の生き方を〝現状維持するのが目標(麦)〟なんて近視眼的な目標立ててるようじゃ、おママゴトにしか見えないワケで。低単価でもイラスト描いてる麦の方が素晴らしくて、時間に追われるようにサラリーマンやって二人の生活を支えようと奮闘している麦が、あたかもツマラナイ仮そめの姿であるかのように思っちゃったのか、どうなのか(絹)?
 現実的な対処ができないですれ違うなんて、実にありふれた展開。それを丁寧に描いてはいるものの……正直、二人を見てて、『恋愛って素晴らしい』と思えなかったボクは、槇原敬之さんの『もう恋なんてしない』でも歌った方がイイでしょうか?www


 実際のところ、この映画でイチバン嫌だなと思ったのが、最後のファミレスのシーンなのね。
 二人で話そうって言って、いつものファミレスに入るんだけど、窓際のいつもの二人の指定席に先客がいて奥の壁際の席にいくことになり、麦がほぼほぼ自分の言いたいことを告げて、場が煮詰まったあとですわ。

 若いカップルが、いつの間にか空いてた麦と絹の指定席だった場所に座り、二人が5年前に出会ったころを彷彿とさせるようなやり取りをなぞって見せるワケですよ。

 あざとい。あざとすぎる!

 もう悪趣味が過ぎて、反吐が出そうでした。
 くだんの若いカップルにとっては、まったくもって新たな恋の始まりだったはずなのに、明らかにオンマイク状態で二人に麦と絹とのやり取りをそっくりなぞって見聞きさせることが、彼らの新たな始まりをひどく汚しちまってるように思えたんですよ。
 麦と絹ばかりに視点を置いた、実に、独善的な描き方じゃないですか?
 ある意味、若い二人も、5年もすれば麦と絹みたいにこじらすんだけどね……みたいに描いてるようにしか思えなかったボクは、(自覚はありますけどwww)相当なヒネクレ者でしょうか?
 ま、たぶん。カップルの女子の方が、清原果耶さんだったから、というのも間違いなくあるよね。そこは、否定できないwww
 とは言え、もうちょっと若いカップルの方をね。
 彼らはまったく別の人格なんだから、麦と絹と同じってワケじゃなく、単に二人の様子が5年前の麦と絹との出会いを思い起こさせただけ、みたいに、丁寧に描き分けて欲しかった、そう思います。


 さらにさらに、ね。
 〝たった今〟に時間が戻っちゃって、現在の麦と絹の関係性が確かめられるワケですけど、やっぱり昭和世代のオヂサン的には〝イマドキの若いモン〟の恋愛事情に、何とも言えない脱力感を覚えるワケです。

 観終えた後の「なんだ、それ?」感が凄すぎて……
 うん。ボクが観ちゃいけない映画だったよ。


土井裕泰さんは〝TBSのエースディレクター〟と呼ばれているらしいんだけど、観たことある作品が阿部寛さん演じる加賀恭一郎シリーズの『赤い指』しか無かった。世の中の大勢の方々が感動した名作も多いようだけど、ボクがテレビドラマをいかに観ていないかを思い知らされた。『コウノドリ』も『逃げ恥』もまったく観てないんだから^^;
vgaia.hatenadiary.org
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●監督:土井裕泰 ●脚本:坂元裕二