一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

Fantastic girls でーれーガールズ

私的評価★★★★★★★★★☆

でーれーガールズ [Blu-ray]

 (2015日本)


1980年、岡山――。
16歳だった私は、
大切なものを2つ同時に失った。
どうしてだろう…
大切だとわかっていたのに。

 東京から岡山に転校してきたたばかりの佐々岡鮎子(優希美青さん)はクラスに友達がいなかった。そんな鮎子の心の支えはかっこよくてギターもうまい大学生の彼、ヒデホくん。鮎子は密かに2人を主人公に、恋愛マンガを描いていた。ところがある日、その漫画をクラスでも目立つ、美人の秋本武美(足立梨花さん)に見られてしまう。マンガを通して次第に仲を深める2人だったが、ある事件がきっかけで決定的な仲違いをしたまま別れることに…。30年後、大人になり、漫画家になった鮎子(白羽ゆりさん)は、母校で講演会をするため岡山へやってきた。鮎子はそこで、思いがけず武美(安蘭けいさん)と再会する。2人には、あの時どうしても言えなかった秘密があって…。全てが明らかになった時、意外な結末が待ち受ける。

Blu-rayパッケージから引用)


 1980年、岡山――。
 17歳じゃったボクは、でーじなもんを1つ失(の)うしたと同時に、でーじなもんを1つ手に入れた。
 どうしてじゃろう…って、ボクの歴史の中じゃあ、時代の色がすっかり変わる節目の年が、1980年じゃったけんじゃな。

 まぁ、ボクのでーじなもんのこたぁ、どーでもえーハナシじゃけぇ、ほっといていこ。


 あんなぁ、へーぜー耳障りで汚ちゃねー思よーる岡山弁がな、こげん耳に心地えー思うたん、初めてじゃなぁ。
 ふるさとのコトバを映画で聞くんは、なんかしら、ひょこしげな気分じゃな。

 なんかな、ほぼボクの同時代の青春を描いた映画じゃのに、となり町〝岡山市〟のことじゃけん、景色とか、場所とか、学校の制服とか、あんまり馴染みが無かったんよな。
 2人の大切な場所〝鶴見橋〟も、大学時代に年に2~3回、自転車で通過するくれーで、ゆったり下を流れる旭川のことやこぉ、ほとんど見とらんかったけんなぁ。
 じゃけぇどな、舞台のモデルとなった女子高のセーラー服と緑のリボンの組み合わせには見覚えがあったし、男子高校生の淳(須賀健太さん)の前チャック詰襟学ランも(たぶん、モデル高とは違うみたいだけど)当時の岡山の高校生の間じゃあ〝チャックマン〟とか言ゅーて、茶化しとった。都市部行ったら、私学の進学校の学ランのイメージなんじゃけどな^^;

 耳に残る雨音やら、旭川の川面にはねる雨のしぶきやら、雨が印象的じゃった。
 大九明子監督は、部屋の調度品とか、けっこう心に残る映像をちょいちょい挟み込みよるんよな。好きじゃわ、そのセンス。

 30年前の高校時代の思い出と現在のシーンの出し入れが、なかなか絶妙じゃったな。
 そーでもエエんじゃけど、岡山駅の地下連絡道? アレ、たぶん今の地上の連絡通路じゃねぇかな? 奥に見える突き当り、人が降りていきよるように見えたんじゃが。それに、当時の地下道は、もっと狭くて剥げとったし。

 1980年て、山口百恵さんが10月に引退しとんよね。
 主人公の鮎子を始め、仲良しグループ全員ハマってたみたいなんが、なんか不思議なカンジ。当時、小中学生に人気じゃったんかなぁ? ボクは男子じゃったけぇ、70年代はピンクレディー全盛やったし、実際はキャンディーズの方が好きな方じゃったけぇ、だいぶ大人っぽい百恵さんは、むしろ当時40代じゃったオトンの世代の方にウケが良かったような印象じゃったんよな。で、同じ年の4月に松田聖子さんがデビューしてて、80年代アイドル百花繚乱時代の幕開けのさなかに百恵さんが引退したんは、アイドル芸能史的には重大な節目の年じゃった。

 せじゃけど、この映画、百恵さんの曲の使い方が絶妙にエエ選曲、使われ方じゃったと思うんよ。
 ラジオのリクエスト曲から始まる〝ロックンロール・ウィドウ〟のオープニングで一気に気分アゲて、衣替えの高揚した気分で通学自転車を颯爽とこぎながら鮎子が歌う〝ひと夏の経験〟を耳にした八百屋のオヤジ(岡山市長の大森雅夫さん)のひと言がめっさツボって笑ろぉーて、仲良し5人組が体操着のジャージ姿で歌い踊る〝プレイバックPart2〟の途中のブレイクで全員が思い思いの格好でピタッと静止するのがめっさ面白くて、そしてシングル買ったけど「聴いてしまったら、もう終わりになる気がして未だ聴けてない」と鮎子が言う〝さよならの向う側〟をラストに使って、もはや涙腺崩壊するしかねー!っちゅう展開、サイコーじゃったわ。

 なんかな。「田舎のクサい青春映画じゃねぇん?」みたいに侮っとったかも知れんのじゃわ。
 沁みたなぁ……。

●監督:大九明子 ●脚本:源 孝志 ●原作:原田マハ(小説『でーれーガールズ』/祥伝社 刊)