一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

黒猫亭事件

私的評価★★★★★★★☆☆☆

金田一耕助TVシリーズ 黒猫亭事件 [DVD]

 (1978日本)

 深夜、バー黒猫亭の裏庭を掘り返す男の姿を認めたパトロール中の警官。職務質問をすると、隣の寺で修行中の日兆であった。警官が何をしているのかと尋ねても、日兆は何かに怯え、憑かれたように庭を掘り返す。警官も作業に加わると、やがて、全裸の女の首なし死体が現れた。本庁の日和警部(長門勇さん)の捜査で、死体は失踪したバーのマダム・糸島繁(太地喜和子さん)ではないかと思われたが、捜査線上には、お繁以外に桑野鮎子と小野千代子という別のふたりの女の失踪が浮かび上がり、3人の女のいずれもが犯人にも被害者にもなり得るという事態になる。


 まぁ、ミステリとしてはよくあるパターンですが…。見せ方、演出がうまいのでしょうねぇ。ストーリーの大部分が、事件の聞き込み・関係者の証言、つまりほとんど「伝聞」による情報の提示と捜査会議での情報整理のみで進行していくので、お繁以外の失踪者の顔がよく見えないままクライマックス付近まで引っ張られるんですよね。時代的にも戦後間もなくのことで、関係者の写真がないというおまけまで付いて、いよいよ顔なし死体事件は、顔なし失踪者事件として混沌としていく…うまくできていると思います。

 1978(昭和53年)に放映された横溝正史シリーズIIのひとつです。前年の横溝正史シリーズとともに、横溝作品で多く描かれる昭和20年代という時代のいかがわしい雰囲気を実によく表現していると思います。今時の作品だと、どうしても作品当時の描写が作り物っぽく見えて仕方ありませんので。

●監督:渡邊祐介 ●原作:横溝正史(小説「黒猫亭事件」)