一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ゾッキ

私的評価★★★★★★★★★★

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映画『ゾッキ』公式サイトより引用

 (2021日本)

今日も地球は[秘密と嘘]で回っている。

ある女吉岡里帆さん)、[秘密は大事に、なるべくたくさん持て]と助言する祖父(石坂浩二さん)が告白した、秘密の数に腰を抜かす。
ある男松田龍平さん)、あてがないというアテを頼りに、ママチャリで“南”を目指す旅に出る。
ある少年(森優作さん)、成り行きでついた[嘘]をきっかけに、やっとできた友だち(九条ジョーさん/コウテイ)から“いるはずのない自分の姉に恋をしたと告げられ、頭を悩ませる。
ある青年(渡辺佑太朗さん)、今は消息不明の父(竹原ピストルさん)と体験した幼い日の奇妙な出来事を思い出していた。
そして、日々なんとなくアルバイトに勤しむひとりの少年(鈴木福さん)は、“ある事件”が海の向こうの国で起こったことを知る──

(映画『ゾッキ』公式サイト「STORY」より引用)
zokki.jp


 原作の大橋裕之さんの出身地、愛知県蒲郡市を舞台に、竹中直人山田孝之・齋藤工の名優お三方が監督として手腕を揮ったオムニバス作品。
 蒲郡の絶妙な田舎感が、居心地良さそうで、とても癒される舞台になってました。


 『ゾッキ』って、どういう意味でしょう?
 公式サイトの片隅に小さく
 ※「ゾッキ」とは、“寄せ集め”という古本市場で使われる特殊用語。
って書いてあります。なんだよ、いわゆる〝ゾッキ本〟のことかよ。でも、この書き方だと〝古本市場〟だけで使われてる社内隠語みたいに読めるけど、本来〝古書市場〟って書いた方が誤解なくてイイよねwww


 あとで原作の『ゾッキA』と『ゾッキB』を読んで分かったんだけど…かなり忠実に原作の雰囲気やセリフを残したまま、本来関係性のない人物たちの人生が絶妙に交差するオムニバス作品になってます。しかし、その交差する人生どもの時系列がよく分からないところが、原作のゆるい雰囲気をより一層味わい深く醸してて、良かったです。


 ちょっぴり悲しくて、ちょっぴり可笑しくて、ちょっぴり温かい──なんか知らんが、観進めるうちに、じわじわ、ほんわかと心が軽くなって、全身がやさしい多幸感に包まれる、そんな印象でした。

 決して手放しで幸せな人は登場しないし、むしろ底辺に近い暮らしぶりの人ばかり登場するんだけど、でも、決して誰も不幸のどん底ってワケでもないカンジ──ボクらは、気づかないところで、誰かが一所懸命につき続けてくれた嘘によって、知らぬ間に救われてるのかもしれないって、しみじみ思わせてくれます。

 それぞれ置かれた場所で、身の丈に合った暮らしの中で、ささやかでも楽しい人生を送ったらいいんだよな。


 松田龍平さんが自転車で衝突したシーン、マジで衝撃的でした。あれ、スタント使ってたのかな?
 伴くん役の九条ジョーさんが、原作から、まんま飛び出したかと思うくらい見事に役にハマってて、いや、むしろ原作以上にパワフルにこじらせてる、実にクールなキャラを演じられてて、面白かったです。

 そう言えば、出てくる人たち、ほとんどが、自転車で疾走してたなぁ。
 車維持するほどの余裕なさそうな人たちばかりだったモンなぁ…あ、高校生も何人かいてたか^^;
 蒲郡の風景を駆け抜けるには、チャリが似合ってる──そんな引きのドローン映像もふんだんに取り入れてて、それも雰囲気良かったよなぁ。


 しかし、こんなに面白い映画なのに、イオンエンターテイメント配給のせいか、イオンシネマでしか上映してないのは、もったいないですね。ぜひ、自粛生活で心が委縮してしまった多くの皆様方に観ていただいて、クスッと笑って、ほんわかぽかぽかした気分に浸っていただきたい──そんな作品でした。


※原作コミック。速攻でReaderStoreから落としました。面白かったですwww

ゾッキA 大橋裕之 幻の初期作品集

ゾッキA 大橋裕之 幻の初期作品集

  • 作者:大橋裕之
  • 発売日: 2017/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
ゾッキB 大橋裕之 幻の初期作品集

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  • 作者:大橋裕之
  • 発売日: 2017/05/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


●監督・企画:竹中直人 ●監督・プロデューサー:山田孝之 ●監督:齋藤工 ●脚本:倉持裕 ●音楽:Chara ●主題歌:Chara feat. HIMI『私を離さないで』 ●原作:大橋裕之(コミック『ゾッキA』『ゾッキB』/カンゼン刊)