一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

夏への扉―キミのいる未来へ―

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』オフィシャルサイトより引用

 (2021日本)

1995年の僕と2025年の僕で、君を救え!
30年の時を超えて、未来を変える扉を探す──

 将来を期待される科学者の高倉宗一郎(山﨑賢人さん)は、亡き養父である松下(橋爪淳さん)の会社で研究に没頭していた。
 早くに両親を亡くしずっと孤独だった宗一郎は、自分を慕ってくれる松下の娘・璃子(清原果耶さん)と愛猫ピートを、家族のように大事に思っていた。
 しかし、研究の完成を目前に控えながら、宗一郎は罠にはめられ、冷凍睡眠させられてしまう。

 目を覚ますと、そこは30年後の2025年の東京、宗一郎は研究も財産も失い、璃子は謎の死を遂げていた──
 失って初めて、璃子が自分にとってかけがえのない存在だったと気づく宗一郎。

 人間にそっくりなロボット(藤木直人さん)の力を借り、30年の間に起こったことを調べ始めた宗一郎は、ある物理学者にたどり着く。
 驚きの事実を知った宗一郎は、再び1995年へと時を超える。
 ただ、璃子を救うために──

彼女は言ってくれたんだ。
「あきらめなければ、失敗じゃないでしょ」と──


(映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』オフィシャルサイト「Story」より引用)

natsu-eno-tobira.com


 大学生の頃、サークルの友人と先輩が本の感想をダベってる時に、あまり興味無さげに居合せてたボクが小耳に挟んだ作品に、タッド・ウィリアムズ作〝テイルチェイサーの歌〟とロバート・A・ハインライン作〝夏への扉〟があった。いずれも海外のファンタジーSF作品で、ネコが登場する。
 幾ばくかの年月を経て、たまたま両作品ともハヤカワ文庫で入手したのだが、読まないまま、引っ越しのドサクサ紛れに、どこかに行ってしまった。
 だから、原作は未読だけど、ザックリとしたあらすじだけは聞きかじっていたので、映画館でチラシを手にした時から随分と楽しみに待っていたのだ。


 配役では、夏菜さんの演技が良かった。
 ヒールは画面に溢れる胸くそ悪さで、役者自身までイヤな奴と思わせてくれなくっちゃ、本気でのめり込めないモノ。ただ、登場した時から、悪役臭さプンプンさせてたのは、どうなんだろう? 監督の演出の内なのかな?
 清原果耶さんは、ストーリー上、後半はほとんど出番がなかったのが残念だったけど、本作でも表情で見せてくれてて良かったと思う。


 ストーリーは…う~む。甘ったるいファンタジーとしか言えない。

 30年後に判明する悪役の未来が…正直、もっともっと、これでもか、これでもかと散々な目に遭わされ続けるのかと思いきや、冷凍睡眠から覚めたあとに分かるのは、璃子の死のみ。まぁ、これ以上ない仕打ちではあるけれど、無理やり冷凍睡眠させられるくだりを見ていれば、ある程度予想がつく展開だし、むしろ璃子が裏切り者になってる未来の方が、宗一郎にとっては堪える仕打ちだとまで思ったんだが、それだと、あまりにも昼メロ的ドロドロ展開過ぎて、作風に合わないというモノだったんだろうな。
 これは、純な男女の甘ったるいファンタジー&ロマンスだから。

 その上で、2025年。
 ここからの展開、なんということか…宗一郎にとって〝イイ人〟しか登場しない。
 ある意味、もうさまざまな障害が取り除かれたかのような状態で、あとは時空を飛び越えるだけ、みたいな展開…とても甘々な御都合主義全開のSFファンタジーだと思ってしまった。ここでも、ホントは冷凍睡眠の間に、誰かが裏切って思わぬ未来が…ってなって、何度もタイムリープを繰り返す羽目になるんじゃないかと期待したんだが…それじゃあ〝Back to the Future〟シリーズなんだよな。
 本作は、もっとストレートで純なイメージ。純な男女の甘ったるいファンタジー&ロマンスだから(くどい^^;)

 とは言え、分かっていても、予定調和な大団円には、ほろりと泣けてしまった。
 総じて演出、登場人物の演技が良かったということで、たぶん、Blu-ray出たら買ってしまうヤツだと思う。こういう作品、好きなんだよ^^;


 感動的なエンディングになだれこむ展開の中、唐突に流れ始めたLISAさんの耳に刺さるハイトーン・ヴォイスは、ちょっとこの作品の雰囲気に合ってないと感じた。さらに、楽曲が歪み気味で不快でさえあったのは残念だった。
 作品全体の流れからすれば、個人的にはMr.Children桜井和寿さんの歌声でエンディングを迎えたかったと思った。


 あと、設定的に1995年の科学が進みすぎてた。
 テレビだとかコンピュータだとかは、時代を感じさせるシロモノが登場するのに、今でも実用化されてないような、あるいは今頃本格的に実用化され始めたような科学技術が、ほぼ出来上がっているかのような印象。実際、この話を解決に導く画期的な装置は、寡聞にして未だどこかで実用化されたとは聞かないけれど、たぶんこの時代に完成している。

 一方の2025年の未来が、さほど〝未来〟という感じがなかった。4年前に当たる現在の2021年と、ほぼ一緒?と思えた。
 まぁ、半永久的に動く人型ロボットは、まだ実用化されてないけどね。
 ただ、宗一郎がスマホを渡されて戸惑うくだりは、面白かった。
 「いきなりこんなことになってて、ワケ分かんないですよ」状態だったね^^


 そういえば、猫のピートは、もっと魅力的に描ける余地あったんじゃないかな?
 演出の都合で、夏への扉を探してドアを次々と開けるのが精一杯だったんだろうか?
 少なくとも、猫の映画ではない…と思うけど。



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●監督:三木孝浩 ●脚本:菅野友恵 ●音楽:林ゆうき ●主題歌:LiSA『サプライズ』(SACRA MUSIC) ●原作:ロバート・A・ハインライン(作)/福島正実(訳)(小説『夏への扉』/ハヤカワ文庫刊)