一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

獄門島

私的評価★★★★★★★☆☆☆

獄門島[東宝DVD名作セレクション]

 (1977日本)

 昭和21年9月、引き揚げ船の中で病死した鬼頭千万太の遺書を友人の雨宮から託された金田一耕助石坂浩二さん)が、獄門島に渡るフェリーに乗るため、岡山県笠岡市の港にやってきました。折りしも供出されていた獄門島の千光寺の鐘が、鋳潰されるのを免れてフェリーに積み込まれるところで、それを見守る住職の了然和尚(佐分利信さん)に出会った金田一は、了念に千万太の戦死を告げます。瀬戸内海に浮かぶ獄門島は、本鬼頭という大網元を頂点とする、封建的で古い因習に囚われた島でした。その本鬼頭の跡取りとなるはずの千万太の死は、島にとっての一大事です。千万太は雨宮に「俺が帰らないと、3人の妹たちが殺される」と言い残していました。千万太の父・与三松(内藤武敏さん)と後妻・お小夜(草笛光子さん)の間に生まれた月代(浅野ゆう子さん)、雪枝(中村七枝子さん)、花子(一ノ瀬康子さん)の三姉妹です。そして、千万太の通夜の晩、花子の死体が千光寺の境内の梅の木に逆さ吊りにされているのが、了念によって発見されました。駆けつけた金田一の前で、了念は念仏を唱えながら、「きがちがっているが、仕方がない…」とつぶやきます。金田一は、千万太の父・与三松が、精神を病んで、本鬼頭の座敷牢で暮らしていたことを思い出しますが…。


 原作がすでに古典的名作になっていますし、テレビでも何度もリメイクされてますから、ストーリーをご存知の方も多いことでしょう。しかし、この映画以降のテレビドラマは、イマイチですよねぇ。といっても、全部は見てないんですけどね。少なくともテレビ東京系の上川隆也さんの金田一は、画面も美しくないし、ストーリーの解釈も薄い感じがしました。テレビシリーズの本家・古谷一行さんもリメイク版に出演されてましたが、こちらも原作の衝撃的なクライマックスに対して、そんなに軽くてええのんか、という終わり方だったように記憶しています。

 市川崑監督の金田一耕助シリーズは、何度見ても、見応えがあって、感動してしまいます。が、実は本作、個人的にはあまり好きな作品ではないんですね。ま、市川崑監督の金田一耕助シリーズ5作の中では、という相対的な位置づけではあるんですが、たぶんにテレビで何度も見ているために、飽きてしまっているのではないか、そんな感じです。しかし、本作は原作の持つイメージを、一番忠実に表現している映像化作品だと思います。周到な伏線もキッチリ映像として挟んでいますし、とても良心的なんではないかと。

 原作を読んだのは中学生のころです。角川文庫版で、初めて本格的に読破した横溝作品でした(小学生時代に買った『八つ墓村』は、小学生には読むのが困難でした^_^;)。

 古谷一行さんが金田一耕助を演じるTVシリーズが先行し、それとかぶるようにして本作のロードショーが行われるため、原作とは犯人を変えるという趣向が、テレビの予告編で頻繁に流れました。加藤武さんの「ヨシッ!分かった!」のセリフが定着したのも、本作の予告編のおかげだったように記憶しています。

●監督:市川崑 ●原作:横溝正史(小説「獄門島」)