一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

シュリ

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

シュリ [DVD]

 (1999韓国)

 ボクの韓国文化との出会いは、1988年ソウルオリンピック開催年の初夏に、韓国のペーファ女子大の日本語学科の学生さんたちとの交流の機会を得たことでした。実際、韓国に行くまでは、まったく韓国に対する知識はなく、せいぜい、チョー・ヨンピルさんの“釜山港へ帰れ”が日本でもヒットしてたな、ぐらいにしか思うところはありませんでした。学生さんたちに案内されたソウルは、古代朝鮮の城壁に囲まれ、日帝時代の遺物を抱えながらも、オリンピック景気に燃えて、着実に近代化を遂げてゆく、巨大な発熱都市でした。大学路という学生街のレコードショップ(当時のソウルでは日本が一気にCDに走ったのとは対照的に、カセットテープとアナログレコードが主力商品でした。)で、案内してくれた学生さんが、「私の好きな歌手です」と言って買ってくれたのが、日本語名で“ひまわり”という名のフォーク・グループで、これが当時の生の韓国文化に触れた瞬間だったかも知れません。しっとりとした曲ばかりで、ボクも好きになりました。

 韓国から帰ってしばらくして、レンタル・ビデオ屋で、“ミミとチョルスの青春スケッチ”という韓国映画を見つけました。韓国の映像文化に触れたのは、これが最初です。主演女優さんが、カン・スヨンさん(韓国では“ワールド・スター”と冠を付けて紹介される大女優さんだそうです。)で、年齢的にも近かったので、当時の同世代の韓国の若者の考え方なんかを「ふんふん」と分かったふうな気持ちになって、見てました。映画の舞台は大学なんですが、在学中に“徴兵”で一時期男子学生(パク・チュンフンさん)が彼女の元を離れなければならなくなるエピソードには、ハッとさせられました。ふつうに徴兵で学生生活を中断するという現実に、衝撃を受けたのです。このときカン・スヨンさんが涙するのに被せてかかった“離別(イビョル)”という曲がとてもよかったのも、併せて覚えています。

 それからしばらくして、20世紀の終わりごろ、って言ったら大袈裟ですが、スカパーを契約し、K-POPにはまりました。韓国のカウントダウン番組を見て、韓国語の美しい響きに衝撃を受けたのです。最初にフルで見たクリップは、チョ・ソンモさんの“不滅の愛”というバラードで、ドラマ仕立てのクリップは2種類あり、舞台は何故か雪の札幌でした。で、クリップの中の主役が、今をときめく“イ・ビョンホンさん売り出し中”だったのです。同性ながら、「カッコいい俳優さんだな」と思いました。その後、こんなに日本で人気が沸騰するなんて、思いもしませんでした。

 そして、2000年日本公開の“シュリ”です。前振りの方が長くなってしまいました。この映画を見たときも、新たな衝撃を受けました。「韓国はハリウッド的だ」なんて思いました。さすが、日常的に銃を持ってる人間が警備している国(都市)は、土台が違う、などと場違いな感想も持ちました。

 ストーリーは、南北分断という民族的な悲劇を北朝鮮の伝説的女性スナイパー(キム・ユンジンさん)と、韓国情報機関の諜報員(ハン・ソッキュさん)の道ならぬ恋という形で描き、一方で、ソウルを舞台にした北朝鮮のテロと韓国諜報員の対テロ活動を、ソウルのデパートを爆発させたり、ソウル市街で激しい銃撃戦を演じて見せたりと、けっこうヘビーな内容になっています。これを劇場で見たある女性は、「(南北分断というテーマは)別に、大したお話じゃなかったわ」みたいな感想を漏らして辛い採点をつけてましたが、ボクはクライマックスで素直に泣いてしまいました。ま、もともと涙腺弱いんですけどね…。

 キム・ユンジンさん、きれいな女優さんですよね。ボクと誕生日が1日違いなんですよ。いや、歳は10年違いますけど…。ハン・ソッキュさん、今の韓流の走りですかね。そこそこ日本人の中年女性に人気があったんですけど、今ほどの爆発力はなかったですね。

 ボクは興味ないんですけど、今出回っている銃の見本市みたいに、いろんな種類の銃が登場しているそうです。特典映像にも辞典みたいなのがありました。まぁ、イヤんなるくらい銃撃戦が続きます。実は、ボクは銃撃戦が嫌い(熱帯魚屋で、惜しげもなくたくさんの熱帯魚の入った水槽を銃撃戦で破壊する映像は、ある意味、許せません。観賞魚虐待です。)なので、ちょっと辛い採点にしてますが、ドラマはよくできていると思いますよ。

●監督:Je gyu Kang 姜帝圭 カン・ジェギュ