一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

T・R・Y

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

T・R・Y [DVD]

 (2002日本/中国/韓国)

 織田裕二さん、前にも書きましたが、そんなに好きな俳優さんじゃないんですよね。本作でも、織田さんらしい役作りで、伊沢修を演じてましたが、ときおり青島刑事が顔を出すような気がして、落ち着きません。彼は「心優しい善玉」を演じる限り、どこかしら青島俊作を引きずらざるをえないのでしょうね。そういう意味でも、今後“踊る大捜査線シリーズ”に出ないと決めたのは正解だったかもしれません。

 原作は井上尚登さんの同名ベストセラー小説なんだそうです。申し訳ありませんが、まったく知りません。原作どおりに映画化していまうと、2時間やそこらでは収まらない気宇壮大なストーリーなんだそうです。ま、今回はエッセンスをコンパクトに映画化したということでしょうか?

 舞台は20世紀初頭、清朝末期の上海で、大金持ちの悪党相手に詐欺を働く謎の日本人・伊沢修が、騙した中国人から刺客を差し向けられ、危機一髪のところを中国人革命家の関(邵兵=シャオ・ビンさん:中国では有名な俳優さんだそうです。)に救われ、関が刺客を伊沢から遠ざける代わりに、革命に必要な武器弾薬を日本陸軍から騙し取ることを約束させられる、というお話です。日本陸軍の武器弾薬調達の責任者は、猜疑心が強くスキを見せない切れ者の野心家、東正信中将(渡辺謙さん)で、伊沢の弄した策は、ことごとく東中将に見抜かれてしまいます。そして、最後に伊沢が仕組んだ作戦は…結末は、意外と言えば意外ですかね。ま、ネタバレは慎みます。

 まあ、面白いんでしょうねぇ。いわゆるコン・ゲームものですが、騙し合いの部分が、ややスリリングさに欠ける気がします。破綻したときの、次の展開が読めてしまうようなところがあります。この辺の感じ方は人それぞれなので、面白いと感じる人も多いのでしょうね。

 渡辺謙さん、いいですね。本作でもピリピリした東中将の役、はまってました。ドラマを締めてますね。

 ま、ストーリーもさることながら、この映画は、20世紀初頭の上海⇔東京の雰囲気がいい感じなんです。実際に上海で広大なオープンセットを設けて撮影したようですが、この時代の日本や上海のような外国に開かれた都市の風景が好きなので、大森一樹監督がすばらしい仕事をしてくれているのが嬉しいですね。

●監督:大森一樹 ●原作:井上尚登(小説「T・R・Y」)